- 懲戒処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第477号)(東京高判平成20年06月24日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)61
戒告とは,当該司法書士に対し,その非行の責任を確認させ,反省を求め,再び過ちのないように戒めることであり,また,司法書士法又は東京司法書士会会則に,戒告に伴って生ずる法的効果を定めた規定はないから,同法47条1号に基づく戒告は,被戒告者の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえず,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
- 審決取消請求事件(東京高判平成20年06月20日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行ケ)39
公正取引委員会が,他の会社と共に共同企業体(2社で構成)として鋼橋上部工工事を請け負った会社に対し,請負契約の対価全額が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項の「売上額」(同法施行令(平成17年政令第318号による改正前)6条1項の「契約により定められた対価」)に当たるとして算出した課徴金額の納付を命じた審決の取消請求につき,共同企業体方式で請負契約が締結された場合に課徴金を算出するに当たっては,請負代金額全体を担当工事部分の比率で案分した額又は共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の「売上額」とするのが相当であるが,前記請負契約においては,共同企業体が負担する債務の履行に関し,共同連帯してその責任を負うこと及び共同企業体の構成員のうちいずれかが工事途中に破産した場合には,残存構成員が前記工事を完成し,脱退者の出資割合は当然に残存構成員に移転することが請負契約において定められており,前記会社は共同企業体の他の構成員が破産したため,発注者に対し請負契約で定められた代金全額の支払を受けることができる地位を取得したのであるから,その全額が前記会社の「売上額」であるとして,前記取消請求を棄却した事例
- 事業認定取消・各収用裁決取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成14年(行ウ)第296号(甲事件)・平成16年(行ウ)第291号(乙事件)・平成16年(行ウ)第341号(丙事件))(東京高判平成20年06月19日)
裁判所名:
事件番号:平成17(行コ)187
1 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定の取消しを求める訴えにおける,前記起業地内の不動産又は立竹木等について財産上の権利を有しない者の原告適格につき,土地収用法1条の規定からは,同法は,公共の利益と個々人の具体的な私有財産についての権利の調整を図ることを目的とするものであって,起業地内に具体的私有財産を有しない周辺居住者等の権利,利益を保護する趣旨,目的のものではないこと,前記事業認定の根拠規定である同法20条各号のうち,同条1号,2号及び4号は,土地収用の対象事業を定めたり,事業遂行能力,公益上の必要等について定めるものであって,公益的見地からの要件であり,同条3号の規定も,公益的観点から一般的に種々の社会的価値をも保護しようとしているものであること,前記事業認定の申請に適用のある同法(平成13年法律第103号による改正前)23条1項,25条1項の規定は,広く地域住民や何らかの利害関係のある者等の意見を収集して,できる限り公正妥当な事業の認定を行おうという公益目的の規定であること,環境影響評価法あるいは東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号)は,良好な環境を保護することを目的としており,前記土地収用法の目的とは大きく異にし,行政事件訴訟法9条2項にいう「当該法令と目的を共通する関係法令」には該当しないことからすれば,これらの規定が周辺居住者等の具体的利益を保護する趣旨を含む規定と解することはできず,また,道路供用によって生ずるおそれがある騒音,振動,大気汚染等による健康被害も,極めて大規模かつ深刻であって直接的であるとはいえず,法令の具体的規定を全く離れて,生命,身体の安全にかかわるような利益である限りは,法令により常に個別具体的な利益として保護されているとまで解することはできず,法律上保護された利益に当たるとはいえないとして,前記起業地内の不動産又は立竹木等について財産上の権利を有しない者の原告適格を否定した事例
- 東京高判平成20年06月18日
裁判所名:
事件番号:平成20(く)281
- 行政文書非開示処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第342号)(東京高判平成20年06月05日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)12
建築審査会裁決案の評議の議事録に記載された情報つき,建築審査会の裁定の評議が非公開とされているのは,建築審査会の職責を果たすためには,審査の過程で建築審査会の委員による意思表明及び議論が何らの制約を受けることなく率直に行われることが必要不可欠であり,その意思決定に不当な影響が及ぶおそれを極力排除する必要があり,また,当該評議の内容が公開された場合,将来の同種類時の事案の処理に影響を及ぼし,又は及ぼしかねないととられるおそれがある情報等が開示されることにより,無用な誤解や憶測を招くなどのおそれを回避しようとする点にあると解され,この趣旨からすれば,前記情報は東京都情報公開条例7条5号所定の非開示情報(意思形成過程情報)に該当するとした
- 仮の差止め申立却下決定に対する抗告事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ク)第41号,本案事件・平成20年(行ウ)第59号)(東京高判平成20年06月03日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行ス)17
マンション建設予定地の周辺に居住する住民らがした,同マンション建設に係る都市計画法29条1項に基づく開発許可並びに建築基準法59条の2に基づく総合設計許可及び同法(平成18年法律第114号による改正前)6条に基づく建築確認の仮の差止めを求める申立てにつき,行政事件訴訟法37条の5第2項にいう「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があると認められるためには,当該処分の内容及び性質,当該処分によって侵害を受ける権利の性質及びその侵害の程度等を考慮して,事後の救済手段によるのでは著しく救済が困難であることが一応認められることが必要であるとした上,周辺住環境への悪影響等の危険は,前記マンションが建設され実際に利用されることによって生ずる危険や同マンションの建設工事によって生ずる危険であり,前記各処分がされることによって直ちに発生する種類の危険ではないから,仮に当該危険があるとしても,前記各処分がされた後に,その取消しの訴えを提起するとともにその執行の停止を求める方法によっても,その損害の発生を避ける上で時機を失するとはいえず,「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があるとは認められないとして,前記申立てをいずれも却下した事例
- 公文書非公開処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第694号)(東京高判平成20年05月29日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)345
特定の国会議員が米国を訪問した際に在米日本大使館が行った会食及び供応に関する支出証拠等の開示請求に対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律8条に基づき,その存否を答えるだけで同法(平成17年法律第102号による改正前)5条3号及び同条6号に規定する不開示情報を開示することとなるとしてした不開示処分につき,同法8条に基づいて,行政文書の存否を明らかにしないことが許されるのは,当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を開示したこととなる場合や,当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより,当該行政文書は存在するが不開示とすると回答するか,又は当該行政文書は存在しないと回答するだけで,不開示情報を開示したことになる場合に限られると解するのが相当であるとした上,在外公館が国会議員のために飲食を伴う会合を開催するのは,我が国政府関係者が我が国の国会議員と連携して行う情報収集,外交交渉等の外交活動の一環又はその準備若しくはその後の対応の検討のために公にすることを前提としないで開催する場合に限られないから,前記文書の存否を回答し,会合の存在自体が明らかになったとしても,その内容を明らかにしない限り,それが公にすることを前提とするものか否かが明らかになるとは認め難いから,存否を回答すること自体から直ちに,公にすることを前提としない会合の存否を開示したことになるということはできず,また,当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより,不開示又は不存在と回答することだけで同会合の存否を開示したことになると認めることもできないなどとして,前記処分を違法とした事例
- 審決取消請求事件(東京高判平成20年05月23日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行ケ)5
1 公正取引委員会が輸入業者が輸入した商品を購入し,一般消費者に販売していた衣料品の小売業等を営む事業者に対し,不当景品類及び不当表示防止法(平成17年法律第35号による改正前)4条1項所定の「事業者」に当たるとして排除措置命令を命じた審決の取消請求につき,公正な競争を確保し,一般消費者の利益を保護するという同法の目的やそのために排除命令を定める同法の趣旨に照らすと,同法4条1項所定の「事業者」とは,「表示内容の決定に関与した事業者」をいうものと解すべきであり,「表示内容の決定に関与した事業者」には「自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者」のみならず,「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」や「他の事業者にその決定を委ねた事業者」も含まれるものと解され,前記「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」とは,他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者から説明を受けてこれを了承しその表示を自己の表示とすることを了解した事業者をいい,また前記「他の事業者にその決定を委ねた事業者」とは,自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者をいうと解されるところ,前記事業者は,輸入業者から,商品の原産国がイタリアであるとの口頭の説明を受けてこれを信用し,同輸入業者に作成及び取付けを依頼した品質表示タッグ及び下げ札に商品の原産国がイタリアであると記載されることを了解していたこと,同商品を自己が経営するセレクトショップにおいて販売していたことから,前記事業者は,前記「表示内容の決定に関与した事業者」すなわち「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」に当たるなどとして,前記請求を棄却した事例
- 遺族補償年金等不支給決定処分取消請求控訴事件(通称 松本労基署長遺族補償年金等不支給処分取消)(東京高判平成20年05月22日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)149
- 在留特別許可義務付け請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第473号)(東京高判平成20年05月21日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)31
出入国管理及び難民認定法24条1号に該当するとされたフィリピン共和国国籍を有する外国人が,同法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を受けて退去強制令書発付処分を受けた後提起した在留特別許可の義務付けの訴えにつき,同法50条1項柱書及び61条の2の2第2項が定める在留特別許可は,法務大臣が,退去強制対象者と認められた外国人,あるいは,難民の認定がされず又は難民の認定はされたが定住者の在留資格の取得が許可されなかった在留資格未取得外国人に対し,恩恵的措置としてその在留を特別に許可するものであって,本邦にある外国人に在留特別許可を申請する権利はなく,行政事件訴訟法3条6項2号にいう「法令に基づく申請」なるものは存在しないから,前記訴えは,同項1号に規定するいわゆる非申請型義務付けの訴えであるとした上,前記裁決の効力が存続している状態においては,これと矛盾する処分である在留特別許可を法務大臣が行うことはできず,在留特別許可をするためには,前記裁決の効力を失わせ,改めて裁決が行われる機会を設けなければならないところ,前記訴えは,前記裁決が適法であることが前訴において確定している状態で,法律上,前記裁決の撤回を義務付けられるのでなければ,前記裁決と矛盾する処分をし得ない法務大臣に対して,いきなり在留特別許可をすることの義務付けを求めるものであって,当該行政庁が適法に当該行政処分を行うための前提要件が欠けた状態のままにその義務付けを求めるものであるから,訴えとしての適法要件を欠くとして,前記訴えを不適法であるとした事例