- 麻薬及び向精神薬取締法違反被告事件(東京高判平成20年10月16日)
裁判所名:
事件番号:平成20(う)487
裁判所が外国人について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合であっても,裁判所及び検察官が証人尋問の実現に向けて尽力し,入国管理当局も可能な限りこれに協力しようとしていたなど判示の事情の下においては,当該外国人の捜査官に対する供述調書を刑訴法321条1項2号ないし3号に基づき証拠とすることが許容される。
- 更正処分等取消請求控訴事件(原審・さいたま地方裁判所平成16年(行ウ)第35号)(東京高判平成20年10月08日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)189
大工工事業を営む白色申告者の所得税について,反面調査により把握した事業所得の総収入金額に一定の条件により類似業者の平均所得率を乗じて推計してされた更正処分につき,推計の必要が認められ,推計方法も同業者の抽出基準や抽出過程,選択件数,平均的所得率の内容に照らし合理性が認められるところ,実額反証によって推計課税の適法性を覆すためには,その主張する所得額が真実に合致することを主張立証する責任を負うものというべきであり,その主張する所得額が真実に合致すると認められるためには,その主張する収入及び経費の各金額が存在すること,その主張する収入金額がすべての取引先から発生したすべての収入金額(総収入金額)であること,その主張する経費がその収入金額と対応するものであることの三点につき,合理的な疑いを容れない程度に証明される必要があるとした上,その主張する収入金額がすべての取引先から発生したすべての収入金額(総収入金額)であること,その主張する経費がその収入金額と対応するものであることにつき,いずれも合理的な疑いを容れない程度に証明されたとはいえないとして,前記更正を適法とした事例
- 浚渫協議差止請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成19年(行ウ)第26号)(東京高判平成20年10月01日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)118
港湾法37条1項3号及び同条3項に基づき,市が,港湾区域内の水域内において国が行う浚渫工事に関して国との協議に応じた行為につき,同条1項3号及び同3項に規定する「協議」は,港湾の公有水面を公益目的の下に利用し得ることを前提に,公有水面の利用に関する公益性において一般私人と異なる国及び地方公共団体について,港湾施設に関する港湾管理者の公益判断を尊重しつつ,行政主体相互間の公益の調和を図ったものであって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
- 各違法公金支出金返還請求控訴事件(原審・長野地方裁判所平成17年(行ウ)第14号(甲事件),同18年(行ウ)第9号(乙事件))(東京高判平成20年09月11日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)144
県が,知的発達障害者が参加して県内で開催される国際的な競技会であるスペシャルオリンピックス世界大会の企画,組織化,運営実行に関する事業を行うこと等を目的として設立された特定非営利活動法人に,県の職員を研修のためとして派遣したことは,地方公務員法35条に違反し,同職員に対し給料を支給したことが,地方自治法204条の2に違反するなどとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき市長個人に損害賠償の請求をすること及び前記特定非営利活動法人に不当利得の返還の請求をすることを市長に対し求める請求につき,地方公務員に対する研修は,勤務能率の発揮及び増進に寄与するものであることを要するところ,前記職員は,前記世界大会を運営するための組織の構築,多方面への配慮が必要になる種々の運営計画の策定及び実行,さらに人事管理作業等多種多様の作業を行い,広い視野や柔軟な試行等が求められたと推認できることから,前記業務は,地方分権が推進される中で要求される政策形成能力,創造的能力,法務能力,柔軟性等の向上に寄与するものであったといえるし,他の職場や他の地方公共団体及び一般の地域住民等様々な人々と交流して相互に啓発しあう機会を持ち,県の組織とは異なる風土や業務を経験することにより,幅広い視野や柔軟な思考力を養成する機会になったものと認められ,前記派遣は,前記職員の勤務能率の発揮及び増進に寄与するものであり,地方公務員法39条の研修にあたるから,前記職員に対する給与の支給が地方自治法204条に反するものではないなどとして,前記請求を棄却した事例
- 事業計画認可取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第608号)(東京高判平成20年09月10日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)416
都市再開発法58条1項に基づき第一種市街地開発事業に関する施行規程及び事業計画の認可がされた場合,事業計画決定の公告後,施行地区内の宅地及び建築物の所有権並びにその宅地に存する既登記の借地権について権利変換手続開始の登記がされれば,同法70条2項の規定により,当該登記に係る権利を処分するには施行者の承認を要するようになるのであり,施行地区内の宅地所有者等の権利者は,前記公告後30日以内に施行者に対し権利変換又は新たな借地権の取得を希望しない旨の同法71条の規定に基づく申出をすることにより,他に転出して権利変換計画の対象者から除外されるか否かの選択を余儀なくされるものであって,前記認可は,前記権利者の法的地位をその限度で変動させる効果を有するものといえるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
- 東京高判平成20年09月10日
裁判所名:
事件番号:平成20(く)450
- 所得税更正処分取消等,源泉所得税納税告知処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第93号~第97号)(東京高判平成20年09月10日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)39
同族会社が,EB債(他社株償還特約付社債)の名義上の購入者に対し,利息として支払った金員が,同族会社の役員らの利子所得ないし給与所得に当たるとしてされた所得税の更正処分,源泉所得税に係る納税告知処分及びこれらに伴う重加算税賦課決定処分につき,前記EB債の取引は,前記同族会社が具体的な使途がないのに前記役員らから資金調達をして欠損金を発生及び蓄積させ,将来,同社が保有する株式を売却する場合の売却益に対する課税を免れようと企図して行われたものであり,これに伴って生ずる前記役員らの利益を隠ぺいするため,前記役員らが実質支配する海外法人等を複雑に組み合わせた海外投資スキームを作出,実行して,同人らとは無関係の独立した購入者らに利息を支払ったかのような外形を整えたものと認められ,実質的には前記役員らの前記同族会社に対する融資にほかならないから,前記金員は,名義上の投資家に利息が支払われたときに前記役員らの所得として帰属し,取引の実体に即した適正利率の範囲については利子所得に,これを超える部分については給与所得にそれぞれ当たるとして,前記各処分をいずれも適法とした事例
- 差押処分取消請求控訴事件(原審・静岡地方裁判所平成14年(行ウ)第11号)(東京高判平成20年08月28日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)431
- 建築許可処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第351号)(東京高判平成20年08月28日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)84
1 都知事が建築基準法59条の2第1項に基づいてした総合設計許可処分の取消しを求める訴えにつき,同項の趣旨及び目的,同項が前記許可を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等に加え,同法の目的(同法1条参照)をも勘案すると,同項は,前記許可処分に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきであるとして,前記許可処分に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の一室に居住し,又は居住しようとしている者の原告適格を肯定した事例
- 難民の認定をしない処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第491号)(東京高判平成20年08月27日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)107
ミャンマー連邦国籍を有する男性に対して,法務大臣から権限の委任を受けた東京入国管理局長がした出入国管理及び難民認定法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない旨の処分につき,法務大臣は前記男性を難民と認定しなければならなかったのであり,東京入国管理局長は前記男性の難民該当性を考慮せずにその権限を行使した結果,前記処分をしたのであるから,前記処分は法律の適用を誤ったものとして違法というべきとした上,前記男性が難民に該当することは在留を特別に許可すべき事情として重大な考慮要素であるというべきであり,前記男性に対して定住者の在留資格取得の許可又は在留特別許可がされた蓋然性が極めて高いものというべきにもかかわらず,同処分は,難民である前記男性を迫害のおそれのあるミャンマーに送還するものであって,同人に回復不可能な損害を被らせる結果を招来するものであり,出入国管理及び難民認定法61条の2の2の規定のほか,我が国が批准している難民の地位に関する条約及び拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約等の定める人道的配慮に明らかに反するものというべきであり,この観点から見れば,前記処分の瑕疵は,出入国管理及び難民認定法の根幹についての重大な過誤であるとともに,前記男性が難民の要件を満たすことを前提とする限り,何人の判断によっても前記処分とは異なる結論に達し得る程度に明らかといえるから,その瑕疵は客観的に明白であるとして,前記処分を無効であるとした事例