東京高等裁判所における判例

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  •  通知処分取消請求控訴事件(原審・千葉地方裁判所平成19年(行ウ)第15号)(東京高判平成20年12月04日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)236
    それまで認められていた土地建物等の譲渡損失を他の所得の金額から控除することを廃止する旨を定める租税特別措置法31条1項後段の規定(平成16年4月1日施行)を同年1月1日以後に行う譲渡について適用する旨を定める同法附則27条1項の規定が遡及立法に当たり,憲法84条に違反するとしてした,所得税の更正請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消請求につき,納税義務が成立した時点では存在しなかった法規を遡って適用して,過去の事実や取引を課税要件とする新たな租税を創設し,又は既に成立した納税義務の内容を納税者に不利益に変更する遡及立法は,法律の根拠なくして租税を課することと同視し得るから租税法律主義に反するものとされるところ,所得税は,いわゆる期間税であり,暦年の終了の時に納税義務が成立するものと規定されているから,暦年の途中において,納税者に不利益な内容の租税法規の改正がなされ,その改正規定が暦年の開始時に遡って適用されることは,厳密な意味では遡及立法ではないが,憲法84条の趣旨からして,その暦年当初への遡及適用について合理的な理由のあることが必要であり,租税法の立法については,裁判所は立法府の裁量的判断を尊重せざるを得ないから,立法府の判断がその合理的裁量の範囲を超えると認められる場合に初めて暦年当初への遡及適用が憲法84条の趣旨に反するものということができるものというべきであるとした上で,土地建物等の長期譲渡所得についてはかねてから損益通算の制度を廃止すべきことが指摘されていたこと,平成16年1月1日以降の土地建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することは,自由民主党の「平成16年度税制改正大綱」に盛り込まれており,納税者においても損益通算の廃止を予測することはできたこと,暦年の途中から施行されながらその適用が1月1日に遡るものとされた改正規定は少なからず存し,納税者においても改正規定の適用が暦年の当初に遡るものとされることを十分に認識し得たこと,改正規定を暦年当初に遡って適用しないこととすると,損益通算の方法等について疑義が生ずるほか,所得税確定申告の手続が煩雑となるため課税庁においても付加的な労力を要することとなり,不当に廉価な土地建物等の売却を許すことにより不動産市場に悪影響を及ぼしかねないこと,遡及適用される期間は3か月にとどまること,居住用財産を譲渡した場合の譲渡損失の一部については,なお一定の要件の下に損益通算が認められていること等の事情を総合考慮すると,暦年当初への遡及適用には合理的な理由があり,立法府の合理的裁量の範囲を超えないというべきであるから,同項は憲法84条に違反しないとして,前記請求を棄却した事例
  •  源泉徴収に係る所得税の納税告知及び不納付加算税の賦課決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第277号)(東京高判平成20年11月27日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)285
    1 中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合の組合員の死亡脱退に係る持分払戻金のうち,当該組合員の出資金を超える部分につき,同法の規定及び前記組合の定款によれば,同組合においては,組合員の死亡により,原則として,脱退後の事業年度末日における払戻対象金額を出資口数に応じて算定した金額の持分の払戻請求権が当然に発生し,当該組合員の払込済出資額等以上の額の部分は,総会決議により減額されることがあることをいわば一部解除条件として,死亡した組合員がこれを取得するというべきであるとして,前記超過部分は,死亡した組合員の所得となるとされた事例
  •  業務上過失致死,道路交通法違反被告事件(東京高判平成20年11月18日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(う)1744
    公判前整理手続において争点となっていなかった事項に関し,公判で証人尋問等を行った結果明らかとなった事実関係に基づいて,訴因を変更する必要が生じたものであり,仮に許可したとしても,必要となる追加的証拠調べはかなり限定されていて,審理計画を大幅に変更しなければならなくなるようなものではなかったなど判示の事情の下においては,公判前整理手続を経た後の公判審理の段階でされた訴因変更請求が許される。
  •  東京高判平成20年11月17日
    裁判所名:
    事件番号:平成20(く)562
  •  各退去強制令書発付処分取消等請求・各難民の認定をしない処分取消請求・訴えの追加的併合請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第493号(第1事件)・平成18年(行ウ)第451号(第2事件)・同第452号(第3事件)・同第453号(第4事件)・同第706号(第5事件))(東京高判平成20年10月30日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)120
    難民の認定をしない処分を受け,併せて出入国管理及び難民認定法61条の2の2第2項に基づき在留特別許可をしない処分を受けた者が,出訴期間を徒過して提起した同処分の取消しを求める訴えにつき,法務大臣等は,従前,難民の認定をしない処分に対する異議申立てに理由がない旨の決定をする際,併せて出入国管理及び難民認定法61条の2の2第2項に基づく在留特別許可に関する判断を行うなどしていたという事実を前提にすると,難民の認定をしない処分とともに在留特別許可をしない処分を受け,前者に対して異議申立てをした者としては,異議申立てに理由がない旨の決定がされ,改めて在留特別許可をしない処分がされた段階で,両処分の取消しを求めて提訴するのが最も都合が良く,このような方法を予定して当初の在留特別許可をしない処分について提訴を見送っていたとしても,これを責めることはできないとした上,前記の者は,前記難民の認定をしない処分に対する異議申立てに理由がない旨の決定を受けたが,改めて在留特別許可に関する判断はされなかったところ,当該決定に係る通知がされた日から6か月以内に前記訴えを提起していることからすると,前記在留特別許可をしない処分の取消訴訟は,自己に改めて在留特別許可に関する判断がされないことが判明した後,遅滞なく提起されているとみることができるから,出訴期間の徒過については,行政事件訴訟法14条1項及び2項所定の「正当な理由」があるとして,前記訴えを適法とした事例
  •  法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第213号)(東京高判平成20年10月30日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)20
    コンピューターソフトウェア製品の販売支援業を業とする国内企業が租税特別措置法66条の4第1項の国外関連者との間でした役務提供取引における対価の額が,同条2項所定の独立企業間価格に満たないとして,同条1項により,前記役務提供取引が独立企業間価格により行われたものとみなして計算した所得金額に基づいてされた法人税の増額更正処分につき,同条2項第1号ニに規定する独立価格比準法,再販売価格基準法及び原価基準法の基本3法に準ずる方法と同等の方法とは,棚卸資産の販売又は購入以外の取引において,それぞれの取引の類型に応じ,取引内容に適合し,かつ,基本3法の考え方から乖離しない合理的な算定方法をいうとした上,処分行政庁が用いた算定方法は再販売取引を比較対象とするものであって,前記国内企業が取引において果たす機能及び負担するリスクと比較対象法人が比較対象取引において果たす機能及び負担するリスクとが同一又は類似しているということは困難であるから,処分行政庁が用いた算定方法は基本3法に準ずる方法と同等の方法に当たらないとして,前記各処分を違法とした事例
  •  たばこ小売販売業不許可処分取消請求事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第448号)(東京高判平成20年10月30日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)245
    製造たばこの対面販売による店舗営業が停止された後に引き続き設置されているたばこ自動販売機につき,たばこ事業法施行規則20条2号所定の「営業所」とは,製造たばこの小売販売を反復継続して行う施設又は設備をいうものと解するのが相当とした上,前記自動販売機は製造たばこの小売販売を反復継続して行う設備に当たることが明らかであるから,同号所定の最寄りの小売販売業者の営業所に当たるとした事例
  •  固定資産税賦課決定処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第458号)(東京高判平成20年10月30日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)250
    宗教法人所有の各土地が,地方税法348条2項3号所定の非課税となる境内地に該当しないとしてされた各固定資産税賦課処分及び各都市計画税賦課処分につき,地方税法348条2項3号に規定する「境内地」というためには,(1)宗教の教義を広め,儀式行事を行い,及び信者を教化育成するために必要な宗教法人にとって本来的に欠くことのできない土地であって,(2)当該宗教法人が専らその本来の用に供するものであることを要するところ,かかる要件該当性の判断は,対象地の実際の使用状況について,賦課期日に加え,賦課期日以前の状態をも踏まえて認められる外形的,客観的事実関係に基づき,一般の社会通念に照らして,賦課期日現在において同号の要件が認められるか否かを判断すべきであり,また,そうすることをもって足りるものと解するのが相当であるとした上,前記各土地は,前記各賦課期日当時,建設工事現場の一角にすぎず,それ以上に将来どのような目的で使用されるものであるかが外形的,客観的に判然とする状態にあったとは認められないから,社会通念上,宗教の教義を広めること等,宗教法人にとって本来的に欠くことができない本質的な活動のために専ら使用されていたとは認められず,前記賦課期日当時,前記各土地が境内地であったということはできないとして,前記各処分は適法であるとした事例
  •  所得税決定処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第395号)(東京高判平成20年10月30日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)86
    1 弁護士報酬としての着手金は,事件又は法律事務の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その結果のいかんにかかわらず,委任時に受けるべき委任事務処理の対価をいい,事件等の依頼を受けたときに支払を受け,その額も受任時に確定されるものであるから,弁護士が依頼者から事件等を受任した時点で収入の原因となる権利が確定したというべきであり,事件等の処理について委任契約が締結された日の属する年の総収入金額に算入すべきである。
  •  不許可処分取消等請求控訴事件(原審・宇都宮地方裁判所平成18年(行ウ)第12号)(東京高判平成20年10月22日)
    裁判所名:
    事件番号:平成20(行コ)192
    競輪事業の場外車券売場を建設するためにされた道路法32条に基づく道路占有許可申請及び同法(平成19年法律第19号による改正前)24条に基づく道路工事施行承認申請を,不許可及び不承認とした処分につき,各申請の拒否は,いずれも道路管理者の裁量にゆだねられているものの,その裁量はいずれも無限定なものではなく,道路管理上の理由とは関連のない事情を理由として判断することは裁量の逸脱に当たり,また,当該工事を行う必要性,その設計及び実施計画の合理性並びに道路管理上の支障の有無等を総合的に考慮しても,道路の管理上,何ら当該申請を拒絶すべき理由が存しないにもかかわらず,これを拒絶することは裁量の濫用に当たると解されるとした上,前記各申請に係る土地に隣接する産業団地への企業誘致への悪影響,暴力団の出入りやごみの不法投棄等による住民の生活への悪影響等の事情によって前記各処分をしたことは,道路管理者に与えられた裁量を逸脱したものであるといわざるを得ず,前記各処分はいずれも違法であるとした事例

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