- 固定資産税賦課処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ウ)第37号)(東京高判平成21年01月29日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)261
居住用家屋の建替え工事に着手されたものの工事が中断された状態の土地について,地方税法349条の3の2及び地方税法施行令52条の11第1項並びに地方税法702条の3所定の住宅用地に対する固定資産税等の課税標準の価格を軽減する特例のうち,「小規模住宅用地」に対する特例が適用されずにされた固定資産税等賦課処分につき,前記特例の適用要件は当該土地が「居住用家屋の敷地の用に供されている土地」であることであり,原則として土地上に居住用家屋が存在することを要するから,居住用家屋を建て替える場合は,本来建替え期間中は前記特例の適用はないが,「住宅建替え中の土地に係る住宅用地の認定について(通達)」(14主資評第123号)に定めるように前記土地が前年度の賦課期日において住宅用地であり,居住用建物の建替えの前後で当該建物の所有者が同一で,通常必要と認められる工事期間内に新家屋が建築される場合に,例外的に当該土地が「居住用家屋の敷地の用に供されている」と解することは,前記特例規定の趣旨に沿い,課税の公平にもかなう合理的解釈であるところ,前記土地は通常必要と認められる工事期間内に新家屋が建築されておらず,前記土地は前記特例の「居住用家屋の敷地の用に供されている土地」に当たらないから,前記特例は適用されないとして,前記処分を適法とした事例
- 退去強制令書発付処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第274号,同第645号)(東京高判平成21年01月29日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)346
「投資・経営」の在留資格で在留する者に対し,入国審査官がした出入国管理及び難民認定法24条4号イ(資格外活動)に該当する旨の認定,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした同法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決及び入国管理局主任審査官がした退去強制令書発付処分の各取消請求につき,「投資・経営」の在留資格を有する外国人が同法24条4号イにいう無許可で資格外活動を「専ら」行っていることの要件を満たすか否かの判断に当たっては,本邦において当該外国人が開始し又は投資している事業の経営又は管理への従事の状況,無許可で行われた資格外活動の状況,態様及びその就労等に至った経緯,生活費の支出状況その他の諸事情を総合考慮し,本来の在留資格に係る事業の経営又は管理の遂行の状況と資格外活動の状況,態様等を比較検討した上で,当該外国人の本邦における活動の内容が,本来の在留資格に対応する当該事業の経営又は管理以外の資格外活動に該当する就労等に実質的に変更されたものと認められるか否かの観点から判断するのが相当であるとした上,前記の者の会社への関与は,事業の経営又は管理としての実質を相応に備えたものとは評価し難く,会社は実質的に休眠状態となり,主にホステスとして稼働して生計を維持していたなどの事情からすると,本邦における活動の内容が在留資格に対応する以外のものに実質的に変更されていたものと認められることが明らかであるから,前記の者は,同法24条4号イにいう同法19条1項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者に該当するなどとして,前記請求をいずれも棄却した事例
- 既得権有効確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第216号)(東京高判平成21年01月28日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)48
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成10年法律第55号による改正前。以下「昭和59年風営法」という。)28条3項により同条2項に基づく条例の適用を受けないものとして店舗型性風俗特殊営業を継続していた者が,その営業所の建物の工事をした後にした,その営業について,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成17年法律第119号による改正前。以下「平成10年風営法」という。)28条1項の規定又は2項に基づく条例の規定が適用されないことの確認を求める請求につき,昭和59年風営法28条3項は,昭和59年法律第76号による改正の経過規定として,同改正前は規制されていなかった風俗関連営業について,例外的に禁止区域における営業の継続を認めたものであり,平成10年風営法28条3項も同様の規定であると解されることから,同項が適用されるのは,昭和59年風営法施行の際に営業しており,同法27条1項の届出をした風俗関連営業と同一の営業の場合に限られるべきであって,当該営業が,営業所の建物の新築,増改築,大規模な修繕や模様替え等を行ったことにより,以前の営業との同一性が失われれば,もはや例外的な保護を与える必要は存在しないから,同法28条3項の適用が除外されると解すべきであり,「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(平成14年1月22日付け警察庁丙生環発第4号,警察庁丙少発第3号。以下「風営法等基準」という。)において,営業所の建物の新築,移築及び増築,個室の改築,並びに営業所の建物につき行う大規模の修繕若しくは模様替え又はこれに準ずる程度の間仕切り等の変更がなされた場合,その店舗型性風俗特殊営業が同項の規定の適用対象となる「当該店舗型性風俗特殊営業」に当たらないとされているのは,このような場合はもはや営業としての同一性が失われるとしたものであって,同項の解釈基準として相当かつ合理的なものというべきであるとした上,前記工事は,前記建物の2階床及び壁の大部分を取り外す等したものであり,風営法等基準における「営業所の建物につき行う大規模の修繕,模様替」がされたものと認められ,もはや従前の営業との同一性が失われたというべきであるから,前記工事後の営業所の営業には同項が適用されないとして,前記請求を棄却した事例
- 建築確認処分取消等請求(第1事件),追加的併合申立控訴事件(第2事件)(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第336号,平成19年(行ウ)第638号)(東京高判平成21年01月14日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)217
1 東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づき,建築計画につき安全上支障がない旨の安全認定処分がされた場合,同条例4条1項及び2項の定める,建築基準法42条1項の規定する接道要件よりも厳しい接道要件は適用されないことを前提として同法6条1項に基づく建築確認処分がされるところ,従前は,建築主事が,安全上支障がないかどうかの判断も建築確認処分の際に判断していたが,条例の改正により安全判断については外の行政庁が行政処分の形ですることになったため,安全判断に対して独立した争訟の機会が付与されることになったが,それは申請書の権利保護のため争訟の機会を増やす趣旨のものと捉えるのが相当であって,改正前と異なり建築確認の段階においてはもはや安全判断の違法を争うことをできなくするという趣旨までは含まれていないと解するのが相当であるから,安全認定処分の違法は,建築確認処分に承継される。
- 東京高判平成21年01月09日
裁判所名:
事件番号:平成21(く)5
- 執行停止申立却下決定に対する抗告事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ク)第300号,本案・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第709号運転免許取消処分取消請求事件)(東京高判平成21年01月08日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行ス)6
1 違反行為に係る点数累積により運転免許の取消処分を受けたタクシー運転手がした取消処分の効力の停止を求める申立てにつき,前記の者は,前記取消処分時,タクシー運転手としての収入のみで生活し,特段の蓄えもなく,タクシー運転手としての収入があって初めて生活を営むことができる状況であったが,前記取消処分により運転免許が取り消されたため,タクシー運転手として勤務することができず,65歳と高齢で持病もあるため,警備員のアルバイトの職を得ても収入が著しく減少したなど,生活の維持に困難を帰すべき状況に陥ったことをもって,行政事件訴訟法25条2項本文にいう「重大な損害を避けるための緊急の必要がある」とした事例
- 特別掛金納入告知処分取消請求,特別掛金納入告知処分不存在確認等請求,訴えの追加的併合,特別掛金納入告知処分不存在確認等請求各控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第379号(第1事件),第680号(第2事件),第682号(第3事件),同20年(行ウ)第50号(第4事件))(東京高判平成20年12月26日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)205
加入員の数が基準日と比較して20パーセント以上減少した設立事業所の事業主から当該減少した加入員数に係る未償却債務を一括して徴収することを定めた厚生年金基金の規約につき,厚生年金保険法138条2項ないし6項の規定は,掛金に関する定めを前記基金の規約に委ねることを前提として,前記基金がその定めをする際に拠るべき基準として定められた規定ということができ,その基準は,同規定の趣旨に適合する内容のものである限り,同規定内容から一定程度変容した内容の規定を規約に定めることを許容する基準であると解するのが相当であるとした上,同条5項は,前記基金から設立事業所が脱退する場合に積立不足があるときは,受給権の確保及び他の設立事業所との公平を図る観点から,当該脱退事業所の従業員や退職者が今後前記基金から受け取る給付に係る不足分であり当該脱退事業所が負担すべき部分を,その事業主から一括徴収する旨を定めたものと解されるところ,この趣旨からすれば,前記基金がその規約において,営業譲渡や従業員の転籍等,設立事業所の事業主がその意思に基づいて加入員数を減少させた場合に,これを前記基金からの脱退に準ずる行為とみて,当該減少した加入員数につき同項に準ずる計算方法で算定された額の掛金を,当該設立事業所の事業主から一括徴収する旨を定めたとしても,同項の趣旨に適合するといえ,同条2項及び3項の原則的基準にも抵触するものでもないと解されるから,前記規約は,少なくとも設立事業所の事業主がその意思に基づいて加入員数を減少させる場合に適用される限りにおいて,同法138条5項の基準を逸脱するものではないとして,これを有効とした事例
- 政務調査費返還命令取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第654号)(東京高判平成20年12月25日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)298
区長が区議会議員に対してした政務調査費の一部の返還命令の取消請求につき,会派又は議員が当該年度において交付を受けた政務調査費は,当該年度内に現に当該年度の政務調査活動に必要な費用として使用されるべきことが所与の前提とされており,当該年度内に当該年度の政務調査活動の費用として使用されなかった分は,区政務調査費条例に従い区に返還すべきであるところ,ある広報紙の印刷費用が,社会通念上,当該年度内に行われた広報活動に要した費用に含まれると認められるためには,少なくとも,広報紙として印刷されるべき文面の内容が当該年度内に確定され,その確定された内容の文面での印刷を了している必要があり,次年度に入ってから文面の内容を確定して印刷した広報紙を次年度に配布し,当該年度の政務調査費をもって当該印刷費用に充てた場合には,当該費用の支出額は,前記条例に従い返還を要するとした上,前記議員が配布した広報紙は,次年度に入って文面の内容が確定し,印刷が行われたものと認められるから,次年度の広報活動のために作成されたものというべきであるとして,前記請求を棄却した事例
- 審決取消請求(差戻し)事件(差戻前・東京高等裁判所平成15年(行ケ)第335号,上告審・最高裁判所平成16年(行ヒ)第208号)(東京高判平成20年12月19日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行ケ)12
郵便番号自動読取区分機類の製造販売業を営む2社が,旧郵政省の一般競争入札の方法による区分機類の発注に関し,同省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者のみが入札に参加し情報の提示を受けなかった者は入札を辞退するという行為をしていたことが,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)2条6項の「不当な取引制限」に当たるとして排除措置を命じた審決につき,前記の情報の提示を受けていなかった者も,入札条件として設定された期間内に当該区分機類を製造し得る可能性があり,また,他社製の押印機類と自社製の区分機とを接続し得る可能性があったことからすると,前記2社は競争関係にある事業者であると認められ,また,前記2社における前記行為が同省の指名競争入札の方法による区分機類の発注に関して相当以前から行われていたこと,前記2社の担当者が一般競争入札の導入の中止や情報の提示の継続を要請したこと,前記一般競争入札において落札金額を予定価格で除した落札率がすべての物件について99.5パーセントを超えていたことなどからすると,前記2社の間には従前の指名競争入札当時と同様に同省の調達事務担当者等から情報の提示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の提示のなかった者は当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあった者が受注できるようにする旨の少なくとも黙示的な意思の連絡があったとして,前記裁決を適法とした事例
- 所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第333号)(東京高判平成20年12月10日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)73
3名の医師の名義でそれぞれ開設された医療提供施設において雇用された従業員の給与等の所得について税務署長が実質的経営者に対してした源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分の取消請求につき,居住者に対し国内において給与等又は報酬,料金等の支払義務を負う者が,所得税法183条又は204条に基づき,源泉徴収義務を負うところ,同法12条の規定する実質課税の原則によれば,前記各医療施設における事業活動から生ずる所得は,前記各医療施設の開設名義人である前記各医師らではなく,実質的経営者に帰属するものであるが,そのことから,論理必然的に,前記各医療施設の事業活動をめぐる法律関係の当事者ないし主体が実質的経営者であるということが導かれるものではなく,前記各医療施設の開設者が名実共に前記各医師らであることは明らかであって,診療報酬請求権が,私法上,前記各医師らに帰属することは否定する余地がないことから,前記各医療施設で勤務する看護師等の従業員との間の雇用契約の当事者は開設者である前記各医師らであって,同人らが従業員に対する給与等の支払義務を負うものと認めるのが相当であるから,実質的経営者を源泉徴収義務者とする前記各処分は違法であるとして,前記請求を一部認容した事例