- 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第320号,第341号,第343号から第356号,第520号から第523号,平成16年(行ウ)第38号から第43号,第145号,第146号,第304号,第305号)(東京高判平成21年05月28日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)137
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣がした同申請を却下する旨の各処分は,各申請者の疾病の放射線起因性についての判断を誤り違法であるなどとしてした前記各処分の各取消請求につき,原爆認定における放射線起因性は,原爆放射線と疾病の因果関係を判断するものであるから,その判断には,放射線及び疾病に関する高度な科学的知見を必要とするところであるが,その科学的知見が不動のものでない場合にあっても経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性の証明の有無を判断し,その場合の判断基準は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであるという観点から被爆者援護法の精神に則って慎重に判断するものとし,前記認定について,科学的知見は,DS86以外に,初期放射線の被曝線量評価には他に手段はなく,その線量評価は,特に残留放射線及び内部被爆の問題に関する点で,被爆線量を過小評価するなどのおそれがあるものの初期線量の評価について尊重し,定量的判断は,誘導放射線,放射性落下物による放射線及び内部被爆について配慮して被爆の有無及び程度を判断すべきであり,各申請者については,原爆被爆の状況,被爆後の行動,被爆後現れた急性症状,被爆前及び被爆後の健康状態や生活状況,申請疾病の内容及び発症の経過等の事情を考慮し個別の判断をすべきとした上で,前記各申請者の各申請に係る疾病のうち前立腺がん,肝細胞がん,直腸がん,食道がん,右下咽頭がん,肝硬変,頸部有痛性瘢痕,甲状腺機能低下症については,放射性起因性及び要医療性の要件を具備していることから,これらの申請を却下した前記各処分は違法であるとして,前記各請求を一部認容した事例
- 東京高判平成21年05月28日
裁判所名:
事件番号:平成21(く)215
- 不当利得返還(住民訴訟)請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第462号)(東京高判平成21年05月27日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)333
区議会の会派が区から交付を受けた政務調査費の一部を特定政党の機関誌の実質を有する区議団ニュースの印刷経費等に支出したことが違法であるなどとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記会派に不当利得返還の請求をすることを区長に対して求める請求につき,墨田区議会政務調査費の交付に関する条例(平成13年墨田区条例第52号)が,政務調査費は墨田区規則で定める使途基準に従って使用し,区政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならない旨を定め,これを受けて,同条例施行規則(平成13年墨田区規則第27号。平成19年墨田区規則第54号による改正前)が政務調査費を使用するに際して従うべき使途基準を定めているところ,区政に関する調査研究に資するため必要なものに当たるか否かの基準は,同使途基準において具体化されており,また,これらの同使途基準の内容が政務調査費の制度の趣旨に反するものであることをうかがわせる事情は見当たらないから,区政に関する調査研究に資するために必要な経費以外のものに係る支出であるか否かは,当該支出が前記使途基準に反するか否かを基準に判断するのが相当であるとした上,前記会派の発行する区議団ニュースには,前記会派が行う議会活動及び区政に関する政策等が掲載されていることからすると,その印刷経費等は前記条例施行規則別表記載の「広報費」に当たり,前記会派のしたその他の支出も区政に関する調査研究に資するために必要な経費以外の経費に係る支出とはいえないとして,前記請求を棄却した事例
- 損害賠償等請求控訴事件(通称 トータルサービス競業避止義務)(東京高判平成21年05月27日)
裁判所名:
事件番号:平成21(ネ)356
- 傷害致死被告事件(東京高判平成21年05月25日)
裁判所名:
事件番号:平成20(う)1097
上告審判決が基本的に信用するに足りるとした心神喪失を示唆する二つの精神鑑定に関し,同判決中で要検討事項として指摘した3点について新たに行った事実取調べの結果によると,(1)両鑑定が前提とする「統合失調症にり患した者の病的体験の影響下にある認識,判断ないし行動は,一方で認められる正常な精神作用により補完ないし制御することは不可能である」とする立場は,現在の精神医学的知見の現状から見て,一般的であるとはいい難く,(2)「本件行為自体又はこれと密接不可分な場面において,相応の判断能力を有していたと見る余地のある事情」をいわば静的な状態説明概念にすぎない「二重見当識」をもって説明することはできず,(3)被告人の病型である妄想型の統合失調症においては,臨床的にも,行為時に強い幻覚妄想状態にありながら,その後程なくして正常な判断能力を回復することは考えられないから,両鑑定は,被告人が本件行為後程ない時点で正常な判断能力を備えていたと見られる事情を全く考慮しない点でその推論過程には大きな問題があって,いずれもその信用性を肯定できず,本件犯行時の被告人は,心神耗弱の状態にあったと認められる。
- 損害賠償(住民訴訟)請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成14年(行ウ)第231号)(東京高判平成21年05月21日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)287
市が工事の施工等を委託した建設公社により発注された公共下水道に係る複数の工事について,指名競争入札において談合して特定の建設業者を受注予定者とする受注調整が行われた結果,入札参加者間で公正な競争が確保された場合に形成されたであろう正常な落札価格と比較して不当に高い価格で当該建設業者が落札し,市にその差額相当額の損害を与えたとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位してした前記各工事を受注した各建設業者らに対する各損害賠償請求につき,当該地区における約80社の広域総合建設業者間において前記公社発注の工事について受注調整を行う事実上の慣行が存在したところ,前記各工事においては,前記慣行を背景として,前記各建設業者らのうち,当該工事に入札した業者らの各担当者により個別に談合があったと認められるとした上,損害額につき,民事訴訟法248条を適用して,前記各工事の請負契約における各契約金額の5パーセントに相当する金額を損害額と考えるのが相当であるとし,さらに,地方自治法上,不法行為に基づく損害賠償請求権の訴えを提起するか私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成21年法律第51号による改正前)25条に基づく損害賠償請求の訴えを提起するか否かについての裁量権が地方公共団体の長にあるとする規定は存在せず,地方自治法240条がそのような裁量権を与えていると解することもできないから,当該請求権を行使していないことは違法であるとして,前記各請求をいずれも一部認容した事例
- 公立学校共済組合運営審議会委員任命処分取消請求控訴事件(東京高判平成21年05月21日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)32
- 産業廃棄物処理施設設置許可処分取消請求控訴事件(原審・千葉地方裁判所平成13年(行ウ)第17号)(東京高判平成21年05月20日)
裁判所名:
事件番号:平成19(行コ)299
1 産業廃棄物のいわゆる管理型最終処分場の設置に関し,県知事がした産業廃棄物処理施設の設置許可処分の取消しを求める訴えにつき,廃棄物の処理及び清掃に関する法律は,産業廃棄物処理施設の周辺地域に居住する住民に対し,違法な産業廃棄物処理施設の設置に起因する人体に有害な物質の排出によってその健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものであると解されるところ,その被害の内容,性質,程度等に照らせば,この具体的利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものであるとした上,前記処分場から人体に有害な物質を含有する浸出水が許容限度を超えて継続的に排出された場合には,同処分場の建設予定地周辺の台地に居住し,地下水を生活用水,農業用水等に直接利用している者は,その健康又は生活環境に係る著しい被害を直接に受けるおそれがあるとして,同台地内に居住し,同所でカーネーションの栽培事業又は水田耕作を行っている者の原告適格を肯定した事例
- 都税還付金請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第748号)(東京高判平成21年05月20日)
裁判所名:
事件番号:平成20(行コ)13
法人事業税及び法人都民税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた法人が,地方税法に定める義務修正申告の期限後に修正申告し,その納付後に,減額更正処分及び決定処分を受けた場合において,同減額更正処分及び決定処分によって生じた還付加算金の起算日につき,前記修正申告は,地方税法の定める義務修正申告の期限を遵守しないものであったが,あくまで法人税法により義務付けられたものであって,同法の定めに従い前記更正処分により確定した法人税額又は所得額を法人都民税又は法人事業税の課税標準として行われたものであり,前記法人が自らの計算により課税標準を算出したものではないから,前記修正申告により確定した法人都民税額及び法人事業税額が過納となったことについて前記法人に帰責事由があるとはいえないこと,更正処分に従って申告納付した場合の方が,申告納付の措置を採らずに放置して更正を受けた場合に比べ還付加算金の算定において著しい不利益を受けることは不合理であることなどから,前記過納金の還付加算金の算定の起算日は,地方税法17条の4第1項1号に基づき,納付の日の翌日と解すべきであるとした事例
- 所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ウ)第281号)(東京高判平成21年05月20日)
裁判所名:
事件番号:平成21(行コ)5
建築基準法86条2項に定める連担建築物設計制度にかかわる地役権の設定の対価が譲渡所得にあたるとしてされた所得税の更正処分及び更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消請求につき,地役権設定により得られる対価は,所得税法26条1項所定の不動産所得に当たるものの,同項は,このうち「譲渡所得に該当するもの」を除外するところ,連担建築物設計制度にかかわる地役権の設定行為は譲渡所得について定める同法33条1項,同法施行令79条1項により資産の譲渡に含められている建物等の所有を目的とする地上権等の設定等により土地を長期間使用させる行為に当たらないから,譲渡所得に当たると認めることはできず,同法26条1項にいう不動産所得に当たるとして,前記各請求をいずれも棄却した事例