供託金払渡認可義務付等請求控訴事件 - 東京高判平成27年06月17日(建築・住宅判例)

東京高等裁判所(東京都)

事件番号:平成27(行コ)76

目次

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平成27年6月17日判決言渡
平成27年\(行コ\)76号供託金払渡認可義務付等請求控訴事件

主文

1   本件控訴を棄却する。

2   控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1    控訴の趣旨

1    原判決を取り消す。

2    東京法務局供託官が平成25年10月1日付けで控訴人に対してした原判決
別紙2供託目録記載の供託金の払渡請求却下決定を取り消す。

3    東京法務局供託官は,控訴人が平成25年9月20日付けでした原判決別紙
2供託目録記載の供託金の払渡請求につき,払渡しを認可せよ。

第2    事案の概要

1    控訴人は,平成元年3月31日付けで,東京都知事により宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)3条1項所定の宅地建物取引業(以下「宅建業」という。)の免許を受け,同年6月13日付けで,同法25条1項に基づいて,営業保証金(以下,単に「営業保証金」といい,控訴人が供託した営業保証金を「本件保証金」という。)1000万円を供託した。

控訴人の宅建業の免許の有効期間は,平成10年3月31日をもって満了した。

控訴人は,平成25年9月20日,東京法務局供託官に対して,供託原因の消滅を取戻事由として,本件保証金の取戻請求(以下「本件取戻請求」という。)をしたが,東京法務局供託官は,同年10月1日,本件保証金の取戻請求権(以下「本件取戻請求権」という。)につき,消滅時効期間が経過していることを理由として,供託規則31条により,本件取戻請求を却下する決定(以下「本件決定」という。)をした。


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    本件は,控訴人が,本件取戻請求権の消滅時効期間は経過しておらず,本件決定は違法である旨を主張して,被控訴人に対し,本件決定の取消しを求めるとともに,本件取戻請求に係る供託金の払渡しの義務付け(以下「本件義務付けの訴え」という。)を求める事案である。

    原審は,本件義務付けの訴えを却下して,控訴人のその余の訴えに係る請求を棄却して,控訴人が控訴した。

    2     関係法令の定め等,前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張の要旨は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第2事案の概要」1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。

    (原判決の補正)

    (1)   原判決3頁26行目の「,保証金に」を削除する。
    (2)同4頁17行目の「東京法務局」の次に「供託官」を加える。
    (3)同5頁9行目の「だけでなく」 「だけではなく」をと,同頁10行目の「必要とすると解する」を「必要と解する」と,それぞれ改める。

    (4)同6頁15行目の「その期間,」を削除する。
    (5)同8頁16・17行目の「同57年9月2日決定」を「同年9月2日決定・」と改める。

    第3     当裁判所の判断

    1     当裁判所も,本件各訴えのうち,本件義務付けの訴えは不適法であるから却下して,控訴人のその余の訴えに係る請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。

    (原判決の補正)

    (1)   原判決12頁9行目の冒頭から同13頁10行目の末尾までを次のとおり改める。


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      「ア   宅建業法30条2項は,宅建業者であった者又はその承継人は,当該宅建業者であった者が供託した営業保証金につき還付請求権を有する者に対する営業保証金取戻公告を行い,同公告において定めた期間(以下「公告期間」という。)内に還付請求権を有する者からの申出(以下「還付請求権申出」という。)がなかった場合に,還付請求権申出がなかった部分について当該営業保証金を取り戻すことができる旨を規定する。宅建保証金規則10条は,営業保証金の取戻しをしようとする者は,公告期間内に還付請求権申出がなかった場合には,都道府県知事等の発行するその旨の証明書,公告期間内に還付請求権申出があった場合には,都道府県知事等の発行するその旨の証明書及び還付請求権申出に係る還付請求権が存在しないこと又は消滅したことを証する書面を,供託物払渡請求書に添付しなければならない旨を規定する。このように,公告期間内に還付請求権申出があった場合でも,同申出に係る還付請求権の不存在又は消滅を証明すれば取戻請求権を行使することができるのであるから,取戻請求権は,営業保証金取戻公告及び公告期間の経過並びに公告期間内の申出に係る還付請求権が不存在又は消滅した場合において,法律上行使することができると解されるのである。そして,還付請求権は,当該営業保証金を供託した宅建業者との間の宅地建物取引業の取引により生じた債権について発生するものであるから,営業保証金の取戻事由が発生した時点では,上記取引は既に行われており,同還付請求権の存否は,法律上は既に確定しているものと認められるのである。そうであるとすれば,結局,還付請求権申出の有無にかかわらず権利行使が禁止される公告期間が満了すれば,取戻請求権は,還付請求権申出に係る還付請求権が存在しない場合には,その行使が法律上可能になっているというべきであり,営業保証金の取戻しをしようとする者は,公告を自らの意思で行うことができ,その際,公告期間も6月を下らない期間で任意に定めることができ,最低限6月とすることができるのであるから,取戻事由が発生し,6月が満了した時点で,営業保証金の取戻請求権の行使は法律上可能になると解されるのであり,その時点から営業保証金の取戻請求権の消滅時効は進行するもの(民法166条1項)と解するのが相当である(大審院大正2年(オ)第151号同3年3月12日第一民事部判決・民禄20輯152頁参照)。なお,実際に営業保証金取戻公告を行い,公告期間内に還付請求権申出がされ,還付請求権申出に係る還付請求権が存在する場合には,同還付請求権が消滅するまでの間は,取戻請求権の行使に法律上の障害があるというべきであるから,上記還付請求権が消滅した時点から取戻請求権の消滅時効が進行すると解される。


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        イもっとも,宅建保証金規則10条は,営業保証金の取戻しをしようとする者は,その供託物払渡請求書に公告期間内に還付請求権申出がないことの証明書を添付し,又は公告期間内に還付請求権申出があったことの証明書及び同申出に係る権利の不存在又は消滅を証する書面を添付することを要する旨を規定しているが,これは,公告期間内に申出のあった還付請求権の不存在又は消滅の証明方法を規定するものであって,この規定が直ちに営業保証金の取戻請求権の消滅時効の起算点を左右するものとは解されないのである。そして,営業保証金取戻請求権者が,同条にいう公告期間内にされた還付請求権申出に係る還付請求権の不存在及び消滅を「証する書面」を取得するために訴訟手続による必要のある場合であっても,公告期間満了時から10年の間には上記訴訟手続が完結するのが通常であると認められる上,この間,取戻請求権者において,供託関係書類の閲覧を行うなどにより取戻請求権の消滅時効を中断するための手続を執ることができることをも考え併せれば,同条の規定は,前記ア判示の判断を左右するに足りるものではないというべきである。

        ウこれに対し,控訴人は,取戻請求権の行使が可能であるというためには,公告期間の経過のみならず,公告期間内に還付請求権申出がないことも必要であるところ,公告期間内に還付請求権申出がないといえるか否かは,取戻請求をする者の意思によって左右することができないから,上記要件は民法127条にいう停止条件に当たり,このような停止条件が付された権利の行使は,当該条件が成就したときから可能になるのであって,公告期間満了時から取戻請求権の行使が可能になるということはできない旨主張するようである。


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          しかし,公告期間内の還付請求権申出がある場合であっても,営業保証金の取戻事由が発生した時点では,同還付請求権の存否は,法律上は既に確定しているものと認められ,結局,公告期間内の還付請求権申出の有無にかかわらず権利行使が禁止される公告期間が満了すれば,取戻請求権は,還付請求権申出に係る還付請求権が存在しない場合には,その行使が法律上可能になっているというべきことは,前記ア判示のとおりであり,宅建保証金規則10条の規定は,公告期間内に申出のあった還付請求権の不存在又は消滅の証明方法を規定するものであって,直ちに営業保証金の取戻請求権の消滅時効の起算点を左右するものとは解されないことは前記イ判示のとおりであって,前記ア及びイに判示するところに照らせば,公告期間内に還付請求権申出がないことが,営業保証金の取戻請求権の停止条件に当たるものとは認められず,控訴人の主張は採用することができない。」
          (2)同13頁11行目の冒頭から同頁12行目の「部分もある。」までを次のとおり改める。

          「エ     なお,被控訴人は,営業保証金取戻公告をすることが義務付けられている旨主張する。」
          (3)同14頁8行目の末尾に次のとおり加え,同頁9行目の冒頭から同頁12行目の末尾までを削除する。

          「営業保証金の取戻しをしようとする者において自らの意思で営業保証金取戻公告をすることができるとして,取戻事由が発生し,6月が満了した時点で営業保証金の取戻請求権の行使が法律上可能になると解すべきことは,前記ア判示のとおりであるが,そのように解することは,営業保証金取戻公告が義務ではないと解することによって左右されるものではない。」


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            (4)同16頁11行目の冒頭から同17頁3行目の「そこで,まず,」までを次のとおり改める。

            「前記(1)ア判示のとおり,営業保証金の取戻請求権は,公告期間内の還付請求権申出に係る還付請求権が存在しない場合には,公告期間経過によって法律上行使が可能になると解されるところ,営業保証金取戻公告自体も営業保証金の取戻しをしようとする者が自ら行うことができるのであるから,営業保証金取戻公告をしていない場合であっても,営業保証金の取戻事由が発生し,6月が満了した時点で,法律上その行使が可能になるというべきである。

            本件では,前記第2,2(4)判示のとおり,控訴人は営業保証金取戻公告を行っていないが,取戻事由である免許の有効期間満了である平成10年3月31日の翌日から6か月を経過した同年10月2日において,控訴人の本件取戻請求権の行使が可能になったと認められるのであり,同日から本件取戻請求権の消滅時効が進行すると認められる。

            なお,」
            2       以上によれば,本件の各訴えのうち,本件義務付けの訴えは不適法であるから却下すべきであり,控訴人のその余の訴えに係る請求は理由がないのでこれを棄却すべきであり,これと結論を同じくする原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

            東京高等裁判所第5民事部
            裁判長裁判官大 竹たかし


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              裁判官見 米正
              裁判官山 田真紀


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