所得税更正処分取消等請求控訴事件 - 東京高判平成25年03月13日(国税判例)

東京高等裁判所(東京都)

事件番号:平成23(行コ)302

目次

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平成25年3月13日判決言渡
平成23年\(行コ\)302号所得税更正処分取消等請求控訴事件

主文

1   原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2   被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

3   訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1    控訴の趣旨
主文同旨
第2    事案の概要等

1    事案の概要
本件は,外国信託銀行であるa銀行又はb銀行(以下「本件各受託銀行」という。)との間で本件各受託銀行を受託者とする信託契約を締結し,本件各受託銀行をして,c 又はd(以下「本件各GP」という。)等との間で,米国デラウェア州改正統一リミテッド・パートナーシップ法(以下「州LPS法」という。)に準拠して,自らがリミテッド・パートナーとなるリミテッド・パートナーシップ(以下「本件各LPS」という。)を設立する旨のパートナーシップ契約を締結させ,信託契約に基づいて被控訴人らが拠出した現金資産を本件各LPSに対して出資させた被控訴人らが,本件各LPSにおいて,米国所在の中古集合住宅(以下「本件各建物」という。)を購入し,これを賃貸する事業を行ったことから,本件各建物の貸付けに係る所得は被控訴人らの所得税法26条1項所定の不動産所得に当たり,その賃貸料等を収入金額とし減価償却費等を必要経費として不動産所得の金額を計算すると,損失の金額が生ずるとして,(1)その減価償却費等による損益通算をして所得税の確定申告書若しくは修正申告書を提出したところ,処分行政庁から,所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受け,又は(2)当該損益通算をせずに確定申告書若しくは修正申告書を提出した後,損益通算をすべきであったとして更正の請求をしたところ,処分行政庁から,更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため,これらの処分は違法であると主張して,控訴人に対し,原判決別紙5の請求目録記載の各所得税の更正処分(ただし,被控訴人ら主張の総所得金額及び納付すべき税額を超える部分。以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)又は更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件各通知処分」といい,併せて「本件各処分」という。)の取消しを求めた事案である。

これに対し,控訴人は,本件各LPSから本件各受託銀行を介して被控訴人らに割り当てられた本件各建物の貸付けに係る損益について,(1)本件各LPSは我が国の租税法上の「法人」又は「人格のない社団」に該当するから,当該損益は,本件各LPSに帰属するものであって,被控訴人らに直接帰属するものではなく,(2)本件各LPSが我が国の租税法上の「法人」又は「人格のない社団」に該当しないとしても,当該損益は被控訴人らの不動産所得(所得税法26条1項)には該当しないので,本件各建物の貸付けから生じた損失が本件各LPSから本件各受託銀行を通じて被控訴人らに割り当てられたとしても,当該損失は,被控訴人らの「不動産所得の金額」の「計算上生じた損失の金額」(同法69条1項)に当たらず,これをもって損益通算をすることはできないから,本件各更正処分及び本件各通知処分は適法であり,被控訴人らには国税通則法65条4項の「正当な理由」はないから,本件各賦課決定処分も適法であると主張した(なお,控訴人は,原審第22事件の訴えについては,不服申立手続を経ていないから,不適法な訴えであるとも主張した。)。

したがって,原審全事件を通じて,次の点が争点となった。
ア本件各LPSの租税法上の法人該当性

イ本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性

ウ本件各建物の貸付けから生じた損益の不動産所得該当性

エ国税通則法65条4項の「正当な理由」の有無
原判決は,上記アの争点については,外国の法令に準拠して組成された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かは,原則として,当該外国の法令の規定内容から,その準拠法である当該外国の法令が当該事業体を法人とする旨規定していると認められるか否かによるべきであるが,当該外国の法令の規定内容をその文言に従って形式的に見ることに加えて,当該外国の法令が規定するその設立,組織,運営及び管理等の内容に着目して経済的・実質的に見れば,明らかに我が国の法人と同様に損益の帰属すべき主体としてその設立が認められたものといえるかどうかを検討すべきであり,後者の点が肯定される場合に限り,我が国の租税法上の法人に該当すると解すべきであるとした上で,州LPS法には,州LPS法に準拠して組成されたLPSは「separate legal
(独立した法的主体)
entity」         となる旨の規定はあるが,「separatelegalentity」が我が国の租税法上の法人を意味する概念であるということはできず,また,州LPS法に準拠して組成されたLPSは,経済的・実質的にみても,パートナー間の契約関係を本質として,その事業の損益をパートナーに直接帰属させることを目的とするものであるから,州LPS法の規定するその設立,組織,運営及び管理等の内容に着目して経済的・実質的に見ても,明らかに我が国の法人と同様に損益の帰属すべき主体としてその設立が認められたものということはできないとして,本件各LPSの租税法上の法人該当性を否定し,さらに,上記イの争点についても,本件各LPSは,民法上の組合に類似した組織形成,運営等がされることを予定したものにすぎず,民法所定の法人の組織,運営及び管理にみられるような団体性を有していないとして,本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性も否定した。そして,上記ウの争点については,本件各建物の貸付けから生じた損益の不動産所得該当性を肯定し,本件各建物の貸付けから生じた損失による損益通算を認めて被控訴人らの総所得金額及び納付すべき税額を算定し,本件各処分の全部又は一部は違法であると判断して,被控訴人e,被控訴人f,被控訴人g,被控訴人h,被控訴人i及び被控訴人jの請求を全部認容し,その余の被控訴人らの請求を一部認容した(原判決が取り消した処分は,原判決別紙3の取消処分目録(更正決定後のもの)記載のとおりであり,各被控訴人の請求と本件各処分の原判決が取り消した部分との関係は,原判決別紙12の請求・取消部分対照表(更正決定後のもの)記載のとおりである。なお,原判決は,原審第22事件の訴えが不適法であるとの控訴人の主張も排斥した。)。

このため,本件各処分の全部又は一部の取消しを不服とする控訴人が本件控訴を申し立てた(なお,控訴人は,控訴の趣旨において,原審第22事件の訴えの却下を求めていないので,当審においては,原審第22事件の訴えの適法性は争点となっていない。)。

2   「関係法令の定め」,「前提事実」,「税額等に関する当事者の主張」,「争
点」及び「争点に関する当事者の主張の要旨」は,次の3及び4のとおり当審における控訴人の主張及び被控訴人らの主張を付加するほかは,原判決(更正決定後のもの)「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1から5までに記載(原判決の別紙4,別紙6から別紙10までを含む。)のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決24頁8行目,25頁15行目,26頁11行目,424頁21行目及び473頁16行目の「原告の主張」をいずれも「被控訴人らの主張」に,177頁及び178頁の図式中「ゼネラル・パートナー」をいずれも「ジェネラル・パートナー」に改め,16頁1行目冒頭から6行目末尾まで,180頁5行目の「(なお,」から6行目の「指摘がある。)」まで,同頁22行目の「(な」から24行目の「指摘がある。)」まで,182頁21行目の「本件LPS(C)は」から22行目の「しないものの,」まで,183頁24行目の「本件LPS(C)は」から25行目の「しないものの,」まで,187頁6行目の「(なお,」から7行目の「指摘がある。)」まで,188頁15行目の「(なお,」から17行目の「る。)」まで,189頁23行目の「(なお,」から24行目の「指摘がある。)」まで,191頁6行目の「(なお,」から7行目の「指摘がある。)」まで,193頁最終行の「(なお,」から194頁2行目の「がある。)」まで,195頁20行目の「(なお,」から22行目の「指摘がある。)」まで,197頁4行目の「(なお,」から5行目の「指摘がある。)」まで,同頁23行目の「(なお,」から24行目の「指摘がある。)」まで,199頁25行目の「(なお,」から200頁1行目の「る。)」まで,202頁1行目の「(なお,」から2行目の「指摘がある。)」まで,204頁7行目の「(なお,」から8行目の「指摘がある。)」まで,205頁3行目の「(なお,」から4行目の「指摘がある。)」まで,206頁10行目の「(なお,」から11行目の「指摘がある。)」まで,207頁4行目の「(なお,」から6行目の「指摘がある。)」まで,209頁22行目の「(な」から24行目の「指摘がある。)」まで及び210頁17行目の「(なお,」から19行目の「指摘がある。)」までを削る。

3     当審における控訴人の主張

(1)   本件各LPSの租税法上の法人該当性について

ア我が国の租税法上の法人とは,「自然人以外のもので,権利義務の主体となることができるもの」をいうから,外国の法令に準拠して組成された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かの判断は,①その構成員の個人財産と区別された独自の財産を有するか否か,②その名において契約を締結し,その名において権利を取得し義務を負うなど,独立した権利義務の主体となり得るか否か,及び③その権利義務のためにその名において訴訟当事者となり得るか否かという基準(以下,①,②及び③をそれぞれ「控訴人基準①」,「控訴人基準②」及び「控訴人基準③」といい,これらを併せて「控訴人基準」という。)によるのが相当であり,これで必要かつ十分である。

イ原判決は,権利義務の主体として取引を行い,財産及び債権債務の帰属主体となる存在が必ずしも損益の帰属主体になるとは限らないと判示するが,通常,取引に係る損益を構成する収入や支出は,当該取引に関する債権債務と表裏一体の関係にあり,構成員と区別された独自の財産を有し,独立した権利義務の帰属主体となる事業体であれば,その事業を営むことにより利益や損失が生ずれば,それらの損益は当然に当該事業体に帰属するから,事業体が損益の帰属主体となることは明らかである。

また,原判決は,控訴人基準は法人と法人でない団体(事業体)とを区別する基準として機能し得ないと判示するが,控訴人基準①についてみると,組合や人格のない社団の場合,その権利義務の帰属形態が共有又は総有であることから,構成員個人が自由にそれを処分することができるわけではないという意味で,その財産は構成員の個人財産とは区別することができるものの,法的には,法人財産のように,法人の独自の財産として法人に帰属し,構成員の個人財産と厳格に区別されるといった関係はない。

控訴人基準②についても,任意組合や人格のない社団が代表者名で法律行為をすることが認められているのは,構成員全員の氏名を列挙することの煩を避けるためであり,人格のない社団の不動産の登記は,代表者が構成員全員からの受託者としての地位において,その個人名義で登記をすべきものとされている。したがって,控訴人基準によって法人と人格のない社団及び任意組合とを区別することは十分に可能である。

そして,控訴人基準によれば,本件各LPSは,我が国の租税法上の「法人」であると優に認められる。

ウ原判決の法人該当性の判断基準は,我が国の法人制度と諸外国の法人制度が異なるにもかかわらず,当該外国の法令が当該事業体を法人とする(当該事業体に法人格を付与する)旨規定しているか否か(以下「原判決基準①」という。)という形式的基準を基本とする点で相当ではないし,その実質を考慮する場合も,当該事業体が損益の帰属すべき主体として設立が認められたものといえるか否か(以下「原判決基準②」という。)という基準によることには合理性がない。

すなわち,原判決基準①についてみると,外国の法令の規定内容によって,我が国の租税法の適用において,我が国の法人と同様の権利能力を有する事業体が法人として扱われず,逆に,我が国の法人の有する権利能力を有さない事業体を法人として扱うことになりかねず,このようなことは,公平の原則に反する上,法人法定主義が採用されていない法制下では,我が国の租税法上の法人として扱われる事業体が存在しないこととなり,極めて不合理な結果を招来する。

また,原判決基準②についてみると,租税法上の法人の概念の解釈として,損益の帰属主体として設立が認められたものであることに殊更着目し,これを法人該当性の判断基準とすることは,根拠に乏しい。法人税法の規定や任意組合についての所得税基本通達等から法人の意義や法人該当性の判断基準を導き出すことはできず,実質所得者課税の原則(所得税法12条及び法人税法11条)は,所得の帰属者について名義人と収益を享受する者とが食い違う場合に,その所得は後者の所得とすることを明らかにしたものであって,課税物件の帰属について「名義と実体,形式と実質とが一致しない場合」に問題となるものである。

エ原判決基準①及び②によっても,本件各LPSは,我が国の租税法上の「法人」に該当する。

州LPS法における「separate   legalentity」の規定は,「同法に基づくLPSは(その構成員から)独立した法的主体である」と規定している以上,これをその文言から読み取れるとおり解釈し,この規定を踏まえた上で,州LPS法により設立されたLPSに対し,法的主体として具体的にどのような権利・義務が付与されているのかを検討して,法人格を付与する旨の規定といえるか否かを判断すべきである。

州LPS法には,「パートナーは,特定のLPS財産に対していかなる持分も所有しない」との規定があること,本件各LPSが契約当事者となって本件各建物の売買契約を締結するとともに,米国の登録所に本件各建物の所有者として登録されていることからすれば,本件各LPSがその特有財産について独立した所有権の帰属主体となることは明らかであり,財産の所有に関して,本件各LPSは,任意組合の持ち得ない権利能力を有している。一方,「separate legal entity」に我が国の租税法上の「法人」と異なる法律効果が認められている根拠はない。

したがって,原判決基準①によっても,本件各LPSが準拠法によって法人とする旨規定されているとみることができる。

また,無限責任を負うジェネラル・パートナーが存在するからといって,本件各LPSが損益の帰属主体とならないとはいえないこと,損益の割当てに関する州LPS法の規定及び本件各LPS契約の条項(4.12条)の存在から本件各LPSが損益の帰属主体とならないともいえないこと,本件各LPSの米国租税法上の取扱いは,チェック・ザ・ボックス制度により,構成員課税を選択したものとみなされているからといって,私法上の損益の帰属先が直接影響されることはないことからすれば,本件各LPSが損益の帰属すべき主体として設立されたとは認められないという根拠はない。

取引から生じる損益は,権利義務の帰属主体である当該取引の当事者に帰属するものであるところ,本件では,本件各LPSが本件各建物の賃貸借契約を締結し,契約の相手方である賃借人から賃料収入を受領しているのであるから,当該賃料収入(及び必要経費)は,本件各LPSに帰属するというべきである。

したがって,原判決基準②によっても,本件各LPSは,損益の帰属すべき主体として設立が認められたものというべきである。

オ州LPS法201条(a)は,LPSを設立するためには,LPS証明書に所定の事項を記載して州務長官登録局に登録するものとすると規定し,「LPSは,LPS証明書が最初に州務長官登録局に登録された時点,あるいはLPS証明書に記載された(当該登録後の)日付にて設立されるものとし」と規定している。

このように,LPS証明書を州務長官登録局に登録することは,パートナーシップがLPSとして認められるための要件,すなわち,LPSの成立要件と解される。

我が国では,会社の設立登記は成立要件とされており,登記が創設的効力を有する。その他の法人でも,一般に,設立登記が成立要件とされている。このことと比較すると,本件各LPSが契約のみによって成立するものではなく,州LPS法の規定に従って公的機関に登録することによって初めて成立するものであることは,州LPS法が本件各LPSに法人格を付与する旨規定していることを根拠付けるものである。

(2)   本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性について
人格のない社団該当性の要件を満たすか否かの評価は,ある程度相対的なものであり,そのような観点から判断すれば,本件各LPSが人格のない社団に該当すると優に認めることができる。

(3)   本件各建物の貸付けから生じた損益の不動産所得該当性について
当該事業体が我が国の租税法上の法人又は人格のない社団のいずれにも該当せず,独立の納税義務者に該当しないとしても,直ちに我が国の任意組合や投資事業有限責任組合と同様に取り扱われるということにはならない。

本件各LPSは,本件各建物の所有者として登録されており,独自の財産として本件各建物を所有している。そして,自ら契約当事者となって,本件各建物を第三者に賃貸している。一方,本件各LPSの構成員であるリミテッド・パートナーは,パートナーシップ持分を有するにすぎない上,本件各LPSの管理又は運営に参加してはならず,いかなる事項に関しても,本件各LPSの名前で行為する権限又は権利を有しないとされている。

これらによれば,本件各LPSの構成員であるリミテッド・パートナーは,本件各建物の所有権を有しているとは認められず,本件各建物の貸主となり得るその余の権利・権原を有しているとも認められない。

不動産所得は,不動産の貸付けによる所得をいうところ,本件各建物の所有者や本件各賃貸借契約の当事者は本件各LPSであり,リミテッド・パートナーは貸主となり得る権利・権原を有していないことに照らすと,被控訴人らが本件各建物を貸し付けているという実態は認められないから,被控訴人らが本件各LPSから割り当てられる利益又は損失は,不動産所得には当たらない。

(4)     必要経費として計上することができる金額について(当審における新主
張)仮に,本件各LPSについて構成員課税が行われ,本件各建物の貸付けから生じた損益が不動産所得に当たるとしても,有限責任構成員であるリミテッド・パートナーの地位にある被控訴人らは,割当てを受けた損失のうち出資額を超える部分については,責任を負わないから,その部分を必要経費に計上することはできない。したがって,本件各建物の貸付けから生じた損失の全部を被控訴人らの「不動産所得の金額」の「計算上生じた損失の金額」として損益通算することは許されない。

被控訴人らが債務を負わず,現実に負担する可能性がない費用は,被控訴人らの純資産を減少させ,その担税力を減殺させる支出に当たる余地はない。

4   当審における被控訴人らの主張

(1)     本件各LPSの租税法上の法人該当性について

ア人格のない社団や任意組合も,その名において訴訟当事者になり得るから,控訴人基準③が法人と法人でない事業体を区別する基準として機能し得ないことは,控訴人も認めるところであり,控訴人基準は,外国の事業体が法人と法人ではない団体のいずれに該当するかを区別する基準としては機能し得ない。

イ法人という概念自体は,内国のものであろうと外国のものであろうと,共通かつ同一の概念であるから,外国の法人についても,第一次的には,内国法人と同じく,準拠法上の法人格の有無(原判決基準①)という形式的判断により法人該当性を判断するのが論理的帰結である。

仮に,法人制度を持たない国が存在し,その国の法律を準拠法とする事業体は,我が国では法人として取り扱われないとしても,その事業体が権利能力のない社団の要件を満たす限りは,外国の人格のない社団として取り扱われるから,課税上の不都合はない。

また,我が国の租税法が規定する法人の課税関係を含む各種事業体の課税関係を詳細に分析・観察すれば,原判決基準②を導き出すことができる。

ウ本件各LPS契約の「各パートナーは,本件各LPSの資産に,そのパートナーシップ出資割合に相当する不可分の持分を有する」との規定(4.5条)は,リミテッド・パートナーが本件各LPSの資産についてエクイティ上の所有権を有すること,本件各LPSの事業により生じた損益がパートナーシップ財産のエクイティ上の所有者であるリミテッド・パートナーに直接帰属することを確認したものである。

本件各LPSがその特有財産について独立した所有権の帰属主体となるとの控訴人の主張は,何の根拠もない。

また,原判決が挙げた根拠によれば,本件各LPSの損益が総額(グロス)ベースでパートナーに直接帰属すると認定することができる。原判決は,無限責任を負う構成員の存在をもって,損益が構成員に帰属することの直接的な根拠としているわけではない。控訴人が指摘する本件各LPS契約の割当てに関する条項(4.12条)は,本件各受託銀行を通じて不動産賃貸事業を営む被控訴人らにおける税務上の取扱いが,純額(ネット)ベースではなく,総額(グロス)ベースで行われていたこと,本件各LPSの総額の損益(収益の総額と費用の総額)を,何らの機関決定を経ることなく,かつ,不動産賃貸損益等の所得の性質を変えることなく,被控訴人らに対してそれぞれ直接に帰属させる取扱いが,契約上も事実上もされていたことを示している。LPSの事業により生じた損益が各パートナーシップに直接帰属することは,米国のパートナーシップ法制の歴史上は当然のことである。

エデラウェア州においてLPSを組成するためには,LPS証明書の提出のほか,リミテッド・パートナーシップ契約の締結が必要である。州LPS法201条(d)によれば,パートナーシップ契約の締結は,LPS証明書を提出した後でも可能であるが,この規定は,LPS証明書が提出されたか否か,提出された時期如何は,LPSの組成に何の影響も及ぼさないことを示している。

一方,リミテッド・パートナーシップ契約が締結されていれば,LPS証明書が提出されていなくても,契約当事者間はもとより,一定の第三者(例えば,責任制限を許容して取引関係に入った債権者)との関係においても,LPSの存在は認められている。これは,LPS証明書の提出が第三者の保護のためであり,これが提出されないことは当事者間の権利及び責任に影響は及ぼさないと解されているからである。

以上のとおり,LPS証明書の提出は,LPSの組成に必須の要件ではなく,LPS証明書を提出する意義は,有限責任のみを有するリミテッド・パートナーというパートナーの参加を認めているLPSであることをいかなる第三者との関係においても主張するための対抗要件として位置付けられる。

そもそも,日本法においても,労働組合や宗教団体は,登記ではなく一定の要件を満たしたときに法人とされ,投資事業有限責任組合は,登記を備えていても法人ではない。このように,LPS証明書の提出は,LPSの法人該当性の判断とは無関係である。

オ以上によれば,本件各LPSは,我が国の租税法上の「法人」には該当しない。

(2)   本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性について
最高裁昭和39年10月15日第一小法廷判決(民集18巻8号1671頁)が示した人格のない社団の4要件を丁寧にあてはめれば,本件各LPSが人格のない社団に該当しないことは明らかである。

(3)   本件各建物の貸付けから生じた損益の不動産所得該当性について
控訴人の主張は,原審における主張の繰り返しであって,根拠なく所得税法26条の規定の文言を離れて独自の要件を付加するものである。

(4)   必要経費として計上することができる金額について
控訴人の主張は,所得税法37条1項に対する「別段の定め」又は同法69条1項に対する除外規定を挙げることなく,有限責任であることを根拠として不動産所得の計算上必要経費に算入すべき金額を制限しようとするものである。これは,所得税法の明文に反する取扱いをすべきというもので,不当である。

第3    当裁判所の判断

1     原審第22事件の訴えの適法性について
当裁判所も,被控訴人fの原審第22事件の訴えは適法であると判断する。

その理由は,原判決「第3当裁判所の判断」の1(26頁25行目から29頁17行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

2     本件各LPSの租税法上の法人該当性について

(1)   外国の法令によって設立された事業体が我が国の租税法上の「法人」に該当するか否かの判断の枠組みについて
アある事業体の事業から生じた収益がその構成員に分配された場合の課税関係に関する我が国の租税法等の概要は,原判決「第3当裁判所の判断」の2(1)ア(ア)から(エ)まで(29頁25行目から36頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

イ次に,我が国の法人法制に関する民法の概要は,原判決「第3当裁判所の判断」の2(1)ア(オ)(36頁24行目から37頁最終行まで)及びイ(ウ)(39頁22行目から41頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決37頁17行目の「法律又は条約」を「法律若しくは条約」に改め,40頁10行目の「江頭論文」の次に(甲「29)」を,同頁17行目の「星野論文」の次に「(甲96)」を加える。

上記のとおり,民法33条(現在の民法33条1項)は,法人の成立(法人格の付与)は,法律の定めによってのみ認められることを明らかにしており,個々の団体の成立の根拠となる準拠法は,当該団体に法人格を付与する場合には,これを法人とする旨の明文の規定を設けている。また,民法36条(現在の民法35条。以下同じ。)は,外国の法令に準拠して法人として成立した(すなわち,外国の法令に準拠して法人格を付与された)団体については,原則として国,国の行政区画及び商事会社等でなければ,我が国において法人として活動し得る法人格の主体として認めないことを明らかにしたものと解される。そして,今日では,準拠法である法律の明文の規定の有無以外に,法人と民法上の組合や権利能力のない社団とを截然と区別する明確な一般的基準は必ずしも見い出し難いものといわざるを得ず,民法36条1項の「外国法人」とは,外国の法令に準拠して法人として成立した団体をいうものと解されることからすれば,外国の法令に準拠して成立した団体が我が国の私法上の「外国法人」であるというためには,当該外国の法令の規定内容に照らして,当該外国の法令に準拠して法人として成立したと認められることを要するものというべきである。

ウところで,我が国の租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には,租税法律主義や法的安定性の確保の観点から,その概念は,原則として私法上の概念と同じ意義に解するのが相当である。したがって,我が国の租税法上の法人は,我が国の私法上の法人と同じく,原則として,その準拠法によって法人とする(法人格を付与する)旨を規定されたものをいうと解すべきである。

そうすると,外国の法令に準拠して設立された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かも,原則として,当該外国の法令の規定内容から,その準拠法である外国の法令によって法人とする(法人格を付与する)旨が規定されていると認められるか否かによるのが相当である。

そして,その判断に当たっては,当該外国の法令の規定内容をその文言に従って形式的に見た場合に,当該外国の法令が当該事業体を法人とする旨規定しているかどうかだけではなく,当該外国の法令がその設立,組織,運営及び管理等についてどのように規定しているかも併せて検討すべきである。

当該事業体に法人格が付与される場合には,当該事業体は権利義務の帰属主体となるのであるから,取引によって得た債権や収入は当該事業体の資産となり,取引によって負担した債務や支出は当該事業体の損失となるとみるほかはない。すなわち,法人格が付与されることで,当該事業体によってされた取引から生じる損益は,まず,当該事業体に帰属することとなるのであって,損益の帰属すべき主体であることは,法人格が付与されたことの結果であるというべきである。また,後にみるとおり((3)コ),課税に関しては,損益が事業体の構成員に帰属すると擬制することもあることからすると,当該事業体が法人に該当するか否かを判断するに当たり,当該事業体が損益の帰属すべき主体として設立が認められたものであるかどうか(原判決基準②)を判断基準にすることは,不要であるといわざるを得ない。

エ控訴人が主張する法人該当性の判断基準(第2の2で引用した原判決第2の5(2)の(被告の主張の骨子)のア及び原判決別紙10の(2)の(被告の主張の要旨)のア)及び被控訴人らが主張する法人該当性の判断基準(第2の2で引用した原判決第2の5(2)の(原告らの主張の骨子)のウ及び原判決別紙10の(2)の(原告らの主張の要旨)のエ)をいずれも採用することができないことは,原判決第3の2(1)エ及びオ(42頁16行目から50頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決43頁5行目冒頭から12行目末尾までを削り,46頁22行目から23行目にかけての「なり得る否か」を「なり得るか否か」に,48頁最終行の「残るし,」から49頁1行目の末尾までを「残る。)。」に改め,49頁24行目の「事業から」から25行目の「としての,」までを削る。

控訴人は,当審においても,外国の法令に準拠して設立された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かの判断は,控訴人基準によるのが相当であり,これで必要かつ十分であると主張するが,控訴人基準が法人該当性の判断の十分条件になるとまではいうことができないこと,控訴人基準は,法人と法人でない団体(事業体)とを明確に区別する基準とすることができないことは,原判決が上記の引用した部分で説示するとおりである。また,控訴人は,我が国の法人制度と諸外国の法人制度が異なるにもかかわらず,原判決が法人該当性の判断基準として,当該外国の法令が当該事業体を法人とする旨規定しているか否か(原判決基準①)という形式的基準を基本とすることは相当ではないとも主張するが,内国法人と外国法人とで法人該当性を統一的に判断するためには,いずれも準拠法によるのが相当である。これに対し,控訴人が主張するように,当該外国の事業体が有する権利能力の内容と我が国の法人に付与されている権利能力の内容とを比較して実質で法人該当性を判断するとすると,国によって法制度が様々である以上,権利能力の構成及び内容が全く同一であるはずはないから,法人に当たるか否かの判断が恣意的で予測不可能なものになりかねない。したがって,当審における控訴人の上記主張は,いずれも採用することができない。

被控訴人らは,当審において,我が国の租税法が規定する法人の課税関係を含む各種事業体の課税関係を詳細に分析・観察すれば,外国の法令によって設立された事業体の法人該当性の判断基準は,当該事業体が損益の帰属すべき主体として設立が認められたものといえるか否か(原判決基準②)であることを導き出すことができると主張する。しかしながら,ウのとおり,租税法上の法人は,私法上の概念と同じ意義に解するのが相当であるから,まず,私法上,どのような事業体を法人である(どのような事業体に法人格が付与されている)と判断すべきかを検討する際に,租税法が規定する事業体の課税関係を持ち出すことは,主客転倒といわざるを得ない。したがって,被控訴人らの上記主張は,採用することができない。

(2)州LPS法及び本件各LPS契約の概要第2の2で引用した原判決第2の2の前提事実(2頁17行目から15頁21行目まで)及び証拠(乙4,36)によれば,本件各LPSは,州LPS法及び州LPS法その他のデラウェア州の法律に準拠する本件各LPS契約に基づいて設立されたと認めることができる。したがって,本件各LPSの法人該当性については,その準拠法である州LPS法の規定内容に照らして,本件各LPSが州LPS法によって法人とする(法人格を付与する)旨規定されていると認められるか否かを検討して判断すべきこととなる。

州LPS法及び本件各LPS契約の概要は,原判決第3の2(2)(51頁10行目から70頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,53頁最終行及び54頁1行目の「原告主張」をいずれも「被控訴人ら主張」に,55頁12行目の「損益の分配」を「損益の割当て」に,58頁21行目の「原告の」を「被控訴人ら主張の」に,65頁20行目及び66頁23行目の「ゼネラル・パートナー」をいずれも「ジェネラル・パートナー」に,65頁25行目から26行目にかけての及び66頁9行目の「利益の割合」をいずれも「利益の割当て」に改める。

(3)    本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するか否かの検討
ア(2)で認定した州LPS法には,州LPS法に基づき設立(被控訴人らの邦訳では,「組成」。以下同じ。)されたLPSは,「独立した法的主体(separatelegalentity)」となるとの規定(201条(b))がある。

そのほか,州LPS法及び本件各LPS契約には,次の規定があることを指摘することができる。

まず,州LPS法によれば,LPSは,州LPS法若しくはその他の法律又は当該LPSのパートナーシップ契約により付与された全ての権限及び特権並びにこれらに付随するあらゆる権限を保有し,それを行使することができる(106条(b))。そして,本件各LPS契約によれば,本件各LPSは,本件各不動産の購入,取得,開発,保有,賃貸,管理,売却その他の処分の目的のみのために設立され,当該目的を実施するために必要又は便宜的な範囲で,本件各不動産の購入,取得,開発,保有,賃貸,管理,売却その他の処分,銀行口座の開設及び維持並びに支払のための小切手その他為替の振出し,金員の借入れ,本件各LPSの財産の担保提供その他の処分,第三者に対する訴訟の提起,本件各LPSに対する請求の解決,独立した弁護士等の雇用,その他上記事項を達成するために必要,適切又は便宜的な活動及び取引,契約その他の約定の締結などの権限を有する(1.3条)。

上記のとおり,本件各LPSは,その名において契約を締結し,その名において権利を取得し義務を負うなど,独立した権利義務の主体となる。

また,その権利義務のために,その名において訴訟当事者となり得る。州LPS法は,LPSに対する訴状・召喚状は,LPSの経営代理人,総代理人若しくはジェネラル・パートナー等に対して直接写しを手渡すことにより,又はこれらの者のデラウェア州内の住居等に送付することにより,送達されたものとみなすと規定する(105条(a))。

次に,州LPS法によれば,パートナーシップ持分は,動産(personalproperty)であり,パートナーは,特定のLPS財産に対していかなる持分も所有しない(701条)。そして,本件各LPS契約によれば,本件各LPSが行う全ての不動産投資その他所有する資産は,本件各LPSの名で,又は本件各GPが随時決定することができる名義人の名で登録される(2.7条)。

乙107(州LPS法の解説書。甲41,甲130及び乙74も,同じ解説書である。)には,州LPS法701条について,「パートナーシップ持分は,LPSの損益に対するパートナーの持分,及びLPS資産の分配を受ける権利を意味することを認識することが重要である」,「不動産のみからなるLPSの資産に対して,パートナーシップ持分を持つパートナーは,当該パートナーシップの不動産に対する持分を持たない」,「LPSが所有する財産の種類に関わらず,当該パートナーシップのジェネラル・パートナー及びリミテッド・パートナーは,特定のパートナーシップ財産に持分を持たない」との解説がされている。

これらの規定からは,本件各LPSは,構成員の財産とは区別された独自の財産を有するということができる。

イ州LPS法は,LPSを設立するためには,一人以上の者(ジェネラル・パートナーの合計数を下回らない数とする。)が,LPSの名称,登録された事務所の所在地並びに訴状・召喚状の送達のための登録代理人の名称及び住所,各ジェネラル・パートナーの名称,事務所等の住所,パートナー全員がLPS証明書に記載するものと決定したその他の事項を記載したLPS証明書を作成し,これを州務長官登録局に登録するものとし(210条(a)),LPSは,最初のLPS証明書が州務長官登録局に登録された時点又はLPS証明書に記載された(当該登録後の)日付で設立されるものとし,いずれの場合においても,上記の要件を完全に満たすものでなければならないと規定する(201条(b))。そして,州LPS法に基づき組織されたLPSは,独立した法的主体(separate legal entity)となり,その独立した法的主体としての地位は,当該LPSのLPS証明書が解除されるまで継続する(201条(b))。

本件各LPS契約では,本件各LPSは,LPS証明書をデラウェア州事務局に提出することにより,州LPS法に従い,デラウェア州のLPSとして設立されたと記述されている(1.1条)。

上記のように,LPSの設立には,LPS契約の締結のみでは足りず,LPS証明書の登録が必要とされている。

LPS証明書が州務長官登録局に登録されているという事実は,当該パートナーシップがLPSであることを通告するものであるとともに,LPS証明書への記載が義務付けられている全ての事実及びLPS証明書への記載が認められている事実が記載されているということを通告するものである(州LPS法208条)。

ウLPSとは,デラウェア州法の下で二人以上の者によって組織され,かつ,一人以上のジェネラル・パートナーと一人以上のリミテッド・パートナーで構成されたLPSを意味する(州LPS法101条(9))が,本件各LPS契約では,本件各LPSの管理及び運営は,本件各GPに独占的に権利が付与され,本件各GPは,これにより,本件各LPSに代わり又は本件各LPSの名で本件各LPS契約に定める本件各LPSの目的の全てを実施する権限を有し,リミテッド・パートナーは,本件各LPS契約に定める場合を除き,本件各LPSの管理又は運営に参加してはならず,いかなる事項に関しても,本件各LPSに代わって又は本件LPSの名で行為する権限又は権利を有しないと規定されている(2.1条)。そこで,本件各GPは,本件各LPSの管理及び運営について,管理報酬の支払を受ける(3.3条)。もっとも,リミテッド・パートナーには,本件各GPの解任権がある(2.6条)。

一方,リミテッド・パートナーの責任をみると,出資に関しては,本件各LPS契約では,本件各GPは本件各LPSの資本に当初の出資をする必要はないのに対し,リミテッド・パートナーは,それぞれ,本件各LPSの資本に対し,別紙A(各パートナーごとに名称,資本出資,パートナーシップ出資割合を順次記載したもの)のそれぞれの名の隣に記載された金額を「資本出資」として出資する(4.2条)と規定されている。そして,第三者に対する責任に関しては,州LPS法では,リミテッド・パートナーは,自己がジェネラル・パートナーでもある場合又はリミテッド・パートナーとしての権利や権限の行使に加えて当該事業の経営管理に関与している場合を除き,LPSの債務を弁済する責任を負わないと規定され(303条(a)),本件各LPS契約では,契約,不法行為その他により生じたか否かを問わず,本件各LPSの負債,債務及び義務は,本件各LPSの単独の負債,債務及び義務であり,リミテッド・パートナーは,リミテッド・パートナーであるという理由のみで本件各LPSの負債,債務又は義務について個人的に責任を負わないと規定されている(1.5条)。

このように,リミテッド・パートナーは,LPSについて,出資のみを求められ,運営への参加を禁じられている。

さらに,パートナーシップ持分の譲渡に関しては,州LPS法では,当該パートナーシップ契約に別段の定めがある場合を除き,①パートナーシップ持分は,その全部又は一部を譲渡することができ,②パートナーシップ持分の譲渡は,LPSの解散や譲受人がパートナーとなったりパートナーの権利・権限を行使したりする資格を得るということを示すものではなく,③パートナーシップ持分の譲渡により,譲受人は,その損益に対する持分を有し,配当を受領し,収益,利益,損失,控除,債権等に関して,譲受人による保有が認められているものについて保有が認められている程度の割当てを受けることができると規定され(702条(a)),本件各LPS契約では,リミテッド・パートナー(受益者でないもの)は,本件各GPのそれぞれ単独で絶対的な裁量に基づく書面による同意がない限り,当該リミテッド・パートナーのパートナーシップ持分の全部又は一部を売却したり譲渡してはならず,いかなる方法によっても処分したり授与してはならず,又は授与を許してはならず,担保権を設定してはならないと規定されている(7.2条)。したがって,本件各LPS契約では,一定の要件の下,リミテッド・パートナーシップ持分の譲渡は,可能である。

エアに関し,被控訴人らは,本件各LPS契約には,各パートナーは,別紙Aに記載されたパートナーシップ出資割合を有し,本件各LPSの資産についてそのパートナーシップ出資割合に相当する不可分の持分を有するとの規定(4.5条)があることから,当審において,上記規定はリミテッド・パートナーが本件各LPSの資産についてエクイティ上の所有権を有することを確認したものであると主張する。

しかしながら,パートナーは特定のLPS財産に対していかなる持分も所有しないとの州LPS法701条の規定と,各パートナーは本件各LPSの資産についてそのパートナーシップ出資割合に相当する不可分の持分を有するとの本件各LPS契約4.5条の規定の関係について,甲124(アレン教授の意見書)は,「エクイティ上所有」との表現もあるものの,具体的には,「リミテッド・パートナーは,共同でも単独でも,パートナーシップの特定の財産又は全部の財産につき,売却も,譲渡も,所有することさえできません。・・・4.5条又はその他の条項をもって,リミテッド・パートナーが,第三者との関係でパートナーシップの特定の財産につき,所有権を持っているかのような徴表を有していると言うことは,一切できません。」,「特定の財産に対する所有権を設定することを意図していたとは考えられず,パートナーシップの全体の財産に対する支配権又は管理権を設定することを意図していたとも考えられないことを勘案するならば,・・・パートナーシップ財産をパートナーシップが行う事業に供したことにより生じる利益及び損失に対する集合的な権利を認知することを意図していたというのが,最も適切な解釈であると考えます。」,「4.5条は,裁量による分配がなされる前において,配分対象となるパートナーシップの利益又は損失は,リミテッド・パートナーによって『所有されている』ことを意味しています。」と説明している。

上記説明によれば,本件各LPS契約4.5条の規定の存在をもって,LPSの特有財産についてパートナーが共同所有者となり得ると解する余地があるということはできない。

この点については,乙68(k弁護士事務所の回答書)も,本件各LPS契約4.5条は,各パートナーが,パートナーシップの資産全体に対して,その割合に応じた不可分の持分を有することを示しており,パートナーシップの特定の資産(例えば,不動産)について直接の持分を有していると定めたものではないから,州LPS法701条と齟齬するものではないと述べ,甲123(ラムザイヤー教授の意見書)も,「州LPS法701条と本件LPS契約4.5条とは互いに相反するものではない。4.5条の趣旨は,パートナー相互の相対的持分を明確化することである。4.5条の規定は対外的な持分に関して影響を及ぼすものではない。」と述べる。

なお,乙79(l弁護士事務所の回答書)は,州LPS法701条とLPS契約4.5条の関係について,デラウェア州裁判所が「集合体理論」をパートナーシップ財産の所有権に適用すると第三者に影響を及ぼすと判断した場合には,同裁判所は,州LPS法201条(b)及び701条がパートナーシップ契約での修正を認めない強制的な規定であると判断する公算が大きいが,第三者には関係なく,全パートナー間のみの関係において,修正することができると決定することは考えられ,パートナーシップ財産の所有権について州LPS法の原則的な規定の適用を回避するためには,デラウェア州裁判所は,パートナーの明確な意思表示及びその意図をできる限り公的に通知することを要求するであろうなどと述べるが,これは,様々な可能性を指摘するのみであり,本件各LPS契約4.5条の規定のみをもって,特定のLPS財産についてパートナーに特定の持分を認める余地があると述べているものとは解することができない。

上記のとおり,本件で提出された意見書等をみても,被控訴人らの上記主張を根拠付けるものはない。

したがって,被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
オイに関し,被控訴人らは,当審において,LPS証明書の登録(被控訴人らの邦訳では,「提出」)につき,LPS証明書の提出は,LPSの組成に必須の要件ではなく,LPS証明書を提出する意義は,有限責任のみを有するリミテッド・パートナーというパートナーの参加を認めているLPSであることをいかなる第三者との関係においても主張するための対抗要件として位置付けられるし,そもそも,LPS証明書の提出はLPSの法人該当性の判断とは無関係であると主張する。

しかしながら,LPSの設立には,リミテッド・パートナーシップ契約の締結が必要ではあるものの,当該事業体が,州LPS法上のLPSとしての存在を認められるためには,州LPS法201条の規定がある以上,その規定を遵守する必要があることは疑いのないところであるから,州LPS法上のLPSとしての設立には,LPS証明書の登録が不可欠である。

LPS証明書の登録がされる前であっても,当事者間にリミテッド・パートナーシップ契約が締結されていれば,その契約に拘束力を持たせることができるとしても,それは,州LPS法上のLPSとしてその存在が認められるか否かということとは別である。

乙74(州LPS法の解説書)では,「デラウェア州LPSは,州LPS法に従って設立されたエンティティでなければならない。パートナーシップ契約はデラウェア州LPSの基礎であるが,デラウェア州LPSを設立させるためには,すべてのジェネラル・パートナーは,LPS証明書に署名し,当該証明書をデラウェア州務長官登録局に登録しなければならない。」,「デラウェア州LPSの設立手続を終了するためには,正式に署名され,登録されたLPS証明書のほか,最低1名のジェネラル・パートナーと1名のリミテッド・パートナーとの間で締結するLPS契約が存在しなければならない。」と解説されている(なお,乙74(甲41の訳文2頁目も,同一箇所)には,「デラウェア州LPSは,本法に基づいていったん設立されれば,LPSのLPS証明書が解除されるまで存続する。

本法は,LPSのエンティティ理論を明示的に取り入れており,LPSは清算手続の目的でLPSを解散した後もエンティティとして存続する。」と記述されている。)。

LPS証明書の登録に関する同様の記載は,乙86(法律百科事典)にも見られ,乙108(法律百科事典)には,「改訂統一リミテッド・パートナーシップ法においては,LPSの存在は,同法の他の規定ではなく,LPS証明書を要求する制定法が順守されているか否かのみにより決定される。」との記載もある。

なお,甲130(州LPS法の解説書)には,「数多くの裁判所は,その裁判所が所在する州のLPS法がLPSを組成するためにはLPS証明書の提出を要求しているにもかかわらず,LPS証明書の提出前にLPSがそのパートナー間において存在し得ると判示している。」,「いくつかの状況において,裁判所は,・・・リミテッド・パートナー予定者の責任はパートナーシップ契約の当事者でない者に対しても制限されると判断した。」との記述があるが,ここでは,リミテッド・パートナー予定者の組成前の責任が問題となっているのであって,裁判所がリミテッド・パートナー予定者に対して無限責任を課すことに消極的であるため,LPSの存在という説明を使っていることがうかがわれる。したがって,「一定の状況において,デラウェア州のLPSのリミテッド・パートナー予定者の有限責任を認める議論として,事実上の会社の存在というコーポレーションの原則を類推する考え方がある。」と紹介されている(なお,注では,「デラウェア州の裁判所がコーポレーションの判例及び原則を類似判例と見たデラウェア州のLPS事件が多く存在する。」とも記載されている。)。

甲130は,まとめの中では,リミテッド・パートナー予定者の有限責任を認識しておらず,又は認容していない第三者に関して,デラウェア州のLPSのリミテッド・パートナー予定者がLPSの組成前の行為について責任を負わない要件の一つとして,「パートナーが,合理的に速やかに,LPSの組成について法律上の要件を満たす」ことを挙げている。

このように,甲130の記載は,LPS証明書の提出がLPSの成立要件でないことを示すようなものではない。

また,甲23(m法律事務所の意見書)には,LPSを組成する過程を完了するためには,パートナーは,パートナーシップ契約を締結しなければならず,LPS証明書が州務長官に提出されなかったとしても,「一定の状況」においては,デラウェア州法の下でLPSの存在をデラウェア州の裁判所が認め得るものと確信するとの記載がある。ここでいう「一定の状況」とは,契約の当事者間であるか,又はLPSとなる者について責任を限定することが意図されていることを第三者が知っており,また,それを承諾している場合を想定しているものと解される。そして,甲23でも,LPS証明書の提出がなかったとしても,一定の状況の下でLPSを認めるということは,自らがリミテッド・パートナーであると善意で信じた者の有限責任性を保護することであると説明されている。したがって,甲23の記載も,LPS証明書の提出がLPSの成立要件でないことを示すものではない。

さらに,被控訴人らは,そもそも,LPS証明書の提出はLPSの法人該当性とは無関係であるとも主張するが,事業体の成立に当事者間の合意のみで足りる事業体と外部的な手続を必要とする事業体とでは,その構成員からの独立性を異にするとみるのが自然であり,このことも,法人該当性の判断要素の一つとすることは合理的である。

したがって,被控訴人らの上記主張は,いずれも採用することができない。

カところで,州LPS法では,州LPS法に基づき設立されたLPSは,「separatelegalentity」となると規定されているが,1985年改訂統一LPS法では,州LPS法201条(b)の第1文に当たる部分しかなかった。すなわち,州LPS法では,特に,第2文の「LPSは,separatelegal
entity となる」との部分が追加された。甲90(アラン教授の意見書)には,上記第2文の追加は,有意な差異を生じさせるものではなく,LPSは,ジェネラル・パートナーの一人(あるいは,全員)が死亡し,又は脱退しても,必ずしも解散するものではないということをより明確化したものにすぎないとの記載があるが,上記の趣旨であれば,そのとおり明文化すればよいものであり,また,上記の趣旨であるとしても,それは,LPSがその構成員から独立した存在であることを意味している。

キ以上のとおり,本件各LPSの準拠法である州LPS法と本件各LPS契約が本件各LPSの設立,組織,管理・運営等について規定しているところによれば,本件各LPSについては,次のことを指摘することができる。

①本件各LPSは,団体として,その構成員と区別された独自の財産を有し,その名において契約を締結し,その名において権利を取得し義務を負うなど,独立した権利義務の主体となる。取得した不動産については,その名で登録することができ,その名において訴訟当事者となることもできる。

②本件各LPSは,LPS証明書の州務長官登録局への登録によって成立する。

③本件各LPSのパートナーは,本件各LPSの個別の財産に対する権利を有さず,これは,本件各LPS契約に各パートナーが出資割合に相当する不可分の持分を有するとの規定があっても変わることはない。

④リミテッド・パートナーには,本件各LPSの債務を支払う責任はなく,有限責任が貫かれている。

⑤リミテッド・パートナーは,管理・運営への参加を禁じられている。リミテッド・パートナーの持分は,厳格な要件はあるものの,譲渡が不可能ではない。

これらを総合してみれば,州LPS法に基づいて設立された本件各LPSは,構成員から独立した法的主体として存在しているというべきであり,州LPS法に基づき設立されたLPSが「separate legal entity」となると規定する州LPS法201条(b)の規定は,州LPS法に基づいて設立されるLPSを法人とする旨を規定しているものと解すべきである。

したがって,本件各LPSは,我が国の租税法上の「法人」に該当する。
ク被控訴人らは,本件各LPSの組成当時の日本における租税実務では,デラウェア州のLPSが我が国の租税法上の法人と同等の事業体ではないとの理解が広く共有され,商法学者も,州LPS法上のLPSに法人格はないとの見解を示しており,被控訴人らに係る国税不服審判所長の裁決も同様であったと主張する(原判決別紙10の(2)(原告らの主張の要旨)のア(ウ)a)。

確かに,我が国の英米法に関する文献や税務当局の実務家の文献の中には,米国の州法に基づくLPSが「法人」ではない旨の記述がされているものがある(甲38(英米法辞典),甲4(新版注釈民法(2)),甲14(新版注釈会社法(1)),甲27,甲75等)。しかしながら,それだけで租税実務でデラウェア州のLPSが我が国の租税法上の法人と同等の事業体ではないとの理解が広く共有されていたとまでは認められず,他にそのように認めるべき証拠もない。また,文献をみても,甲137(論点体系会社法6)には,米国の各州法に基づき設立されるパートナーシップ,リミテッド・パートナーシップについては,いずれも「会社に類似するもの」として外国会社に該当するとする有力説があるとの記載もある。

さらに,国税不服審判所長の裁決(例えば,甲A3)は,「州LPS法に準拠する本件LPS契約においては,本件LPS名義又は本件GPが随時指名した者の名義で,本件LPSが所有するすべての不動産投資その他の財産を登録することができるとされ,また,本件LPSは,州LPS法上,取引や訴訟の当事者となることができ,現に本件建物の売買契約,本件管理委託契約等の契約当事者となるなど,我が国の法律でいう権利義務の主体であるという意味においては,我が国の法律でいう『法人』の要素を備えている」とした上で,「しかしながら,本件LPS契約においては,同時に,『各パートナーは,本件LPSのパートナー出資割合に等しい本件LPSの財産上の不可分の持分を有している』と明記して,本件LPSはその名義の財産をパートナーのために保有することを契約の内容としているともいうことができ,本件LPSがその名義で財産を所有しているとしても,それをもって我が国の法人がその名義で自らのために財産を所有する場合と同視することはできない。」としつつ,「自然人以外のもの」から,ないし「自然人以外のもの」を介して,個人が得た所得の所得区分を定めるに当たっては,その「自然人以外のもの」が我が国の法律でいう権利義務の帰属主体であるか否かのみによって決せられるものではないとの前提で,受託銀行及び本件LPSは,本件LPS契約において,本件LPS活動から生じた分配金の分配や損益の配分の方法を定め,これに基づいて,請求人は本件LPSから損益の配分を受けているのであり,それは,本件LPSが利益の処分として行ったものではないから,配当所得には当たらないし,請求人が自ら本件不動産を賃借人に対して賃貸していたともいえないから,不動産所得にも当たらないとしたものであって,上記の裁決は,本件各LPSの事業体としての性格よりも,所得の性格そのものについて判断したものである。

したがって,国税不服審判所長の裁決が州LPS法上のLPSに法人格はないとの見解を示したというのは,正確ではない。

以上のとおり,被控訴人らの上記主張は,いずれも採用することができない。

ケ被控訴人らは,「legalentity」という概念は,事業体そのものの法的性質,その事業体が事業体理論を本質とするものか,集合体理論を本質とするものかを問わず,一定の目的のために一つの事業体として取り扱われることを説明する概念にすぎず,我が国における「法人格」の概念とは明らかに次元が異なり,「legalentity」に該当する場合であっても,必ずしも「法人」に該当するとはいえないと主張し,甲66から71までによれば,「unincorporatedassociation法人格なき団体),(」「incorporatedcooperativeassociation(法人格ある協同組合)」,「jointventure(ジョイント・ベンチャー)」,「statutorytrust(制定法上の信託)」や「automobileclub(自動車クラブ)」も,「legalentity」であると説明されていると主張する(原判決別紙10の(2)(原告らの主張の要旨)のイ(ア)a)。

しかしながら,州LPS法に基づいて設立されたLPSを法人であると認めることができるのは,それが「separate legal entity」と規定されているとの一事をもってではない。キのとおり,本件各LPSの事業体としての権限,その設立手続,リミテッド・パートナーの持分・責任等を総合的にみれば,州LPS法に基づき設立されたLPSは「separate legal entity」となるとの規定は,法人格を付与する規定とみるのが相当であると解されるのであって,「separate legal entity」という用語の解釈の問題ではない。

したがって,被控訴人らの上記主張は,いずれも採用することができない。

コ被控訴人らは,事業体が独立した「権利義務の帰属主体」となり得るものに該当するためには,当該損益が当該事業体に実質的に帰属していることが必要であるところ,州LPS法503条並びに本件各LPS契約4.7条及び4.8条によれば,ある会計年度において本件各LPSに生じた損益は,パートナーシップ出資割合に従って各パートナーに配分される(shallbeallocated)ことから,当該損益は本件各LPSには帰属せず,グロスの当該損益(収益の総額と損失の総額)が各パートナーに(LPSにおける配当決議を待たずに)直接帰属するとして,本件各LPSは,独立した権利義務の帰属主体とはいえないと主張する(原判決別紙10の(2)(原告らの主張の要旨)のイ(ウ))。

しかしながら,第2の2で引用した原判決第2の2の前提事実(4)(13頁25行目から15頁21行目まで)のとおり,米国では,チェック・ザ・ボックス規則と称される規定が定められ,ある一定の事業体は,連邦課税上,コーポレーション(corporation)として事業体課税を受けるか,又はパートナーシップ(partnership)として構成員課税を受けるかを選択することができるものとされており,二人以上の構成員を有する米国の適格事業体において上記の選択がない場合には,デフォルト・ルールとして,パートナーシップとしての課税を選択したものとみなされる。本件各LPSは,上記の適格事業体に該当するところ,デフォルト・ルールにより,連邦課税上,パートナーシップとしての課税を選択したものとみなされている。

上記のような課税形態が連邦課税上にあることに着目すれば,州LPS法や本件各LPS契約の上記規定は,選択可能な構成員課税と整合しているというにすぎないし,州LPS法503条の解釈については,「州LPS法503条に定めるとおり,LPSの損益は各パートナーが合意したLPS契約書の規定に従って,パートナー間で配分される。その配分は,LPS自身が決定するようなことではない。損益は,LPS契約に従って自動的に配分される。損益がそのような配分の前に,最初にLPSの損益となるかどうかという質問は,米国の裁判所が検討する理由のあるような問題では全くない」との意見(甲123(ラムザイヤー教授の意見書))もあれば,「LPSが得た所得は,その出資者に分配されるまでは,LPSに帰属する。LPSに拠出された資産及びLPSが購入した資産は,その出資者に分配されるまではLPSに帰属する。」との意見(乙109(ゲーゲン教授の意見書))もある。

そもそも,適格事業体が事業体課税を受けるか,又は構成員課税を受けるかの選択をすることができるとの連邦課税上の取扱いは,適格事業体に損益を帰属すべき主体としての実体があることを前提とした上で,適格事業体の組織,管理・運営の特殊性や歴史的な経緯(LPSについては,次のサ参照。)に鑑みて,構成員課税の選択も可能としたものと解される。

したがって,適格事業体について構成員課税が選択された場合には,損益は事業体の構成員に帰属すると擬制するほかはないから,課税に関して損益の帰属主体としてとらえられた者が当然に権利義務の帰属主体であるということにはならないというべきである。

被控訴人らは,事業体が独立した権利義務の帰属主体となり得るものに該当するためには,当該損益が当該事業体に実質的に帰属していることが必要であると主張するが,(1)ウでみたとおり,損益の帰属主体ではなく,契約の主体となり,権利を取得し義務を負担する主体が事業体であるか,又は構成員であるかの区別こそが重要である。

したがって,被控訴人らの上記主張は,採用することができない。サ 証拠(甲38,54,57,86,90,151,乙110)によれば,GPSが英米法のコモン・ローの下で組織された事業体であるのに対し,LPSは,コモン・ローでは知られていない概念で,米国では純粋に制定法による産物であったこと,LPSは,パートナーシップ及びコーポレーションの双方に非常に類似するが,そのいずれでもないハイブリッドなものとして説明されてきたこと,パートナーシップは,最初の統一法では,個々のパートナーの「集合体」であって,パートナーと区分されたエンティティではないとの原則が維持されていたが,改正統一パートナーシップ法では,パートナーと区別されたリーガル・エンティティとなったこと,LPSに対する課税については,他のLLCなどの事業体と同様に,パートナーシップとして課税されるべきか,又はコーポレーションとして課税されるべきかという問題が生じ,裁判所や内国歳入庁は,長年にわたり,訴訟や行政活動を通して,アソシエーションという定義に取り組むことを強いられたこと,課税当局は,1997年のチェック・ザ・ボックス規則の導入により,上記の問題を解決することにしたことが認められる。

このことは,乙82(修正統一パートナーシップ法の解説書。甲42は,その旧版である。)にも,「集合体理論のアプローチは,パートナーシップを個人の集合に対する導管にすぎないとみなしている。各パートナーは,パートナーシップの資産の不可分の持分を所有しており,所有持分に比例してパートナーシップ事業を遂行するものと見られている。一方,エンティティ理論は,パートナーシップをパートナーとパートナーシップ資産の間に介在する別個のエンティティとして取り扱っている。パートナーの持分は,そのパートナーの組織への関与に関連する別個の権利及び負債として,株式における法人株主の持分と同様に見られている。統一パートナーシップ法は,いくつかの目的のためエンティティ理論を採用したが,集合体理論が支配的であった。修正統一パートナーシップ法では,その逆である。201条は,『パートナーシップは,そのパートナーと別個のエンティティである』と定めることにより,明らかにエンティティ理論を採用している。201条は,修正統一パートナーシップ法の多くの条項がエンティティ・モデルに基づいている事実を反映して加えられた。」と記載されている。

甲151(ラムザイヤー教授の意見書)には,「集合体理論からエンティティ理論への移行の帰結として,LPSは,自己の不動産を所有し,エンティティとして自己の名義で取引を行う能力を得たものの,その損益は依然として,パートナーシップ契約に規定する方法で自動的かつ直ちにその構成員に配賦される。」と記載されている。

上記のとおり,LPSは,パートナーシップそのものではなく,コーポレーションでもなく,両者の性格を併せ持った存在であるということができる。

しかしながら,キで指摘した本件各LPSの性質からすれば,本件各LPSは,我が国の租税法上の「法人」と認めることができる。

(4)   以上によれば,本件各LPSが我が国の租税法上の「法人」と認められるという限度で,控訴人の主張は,理由がある。

そうすると,本件各LPSが営む本件各建物の貸付けから生じた損益は,本件各LPS自身に直接帰属することになり,これが,不動産所得の性質を残したまま,被控訴人らに帰属するということはできない。

したがって,上記損益は,被控訴人らの不動産所得には該当しない。被控訴人らの総所得金額,納付すべき税額等は,上記の点(本件各損失による損益通算の可否)に関する部分を除き,計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない(第2の2で引用した原判決の第2の3の税額等に関する当事者の主張(第2の2で訂正した後のもの)のとおり)から,本件各更正処分及び本件各通知処分は,いずれも適法である。

3    国税通則法65条4項の「正当な理由」の有無について
被控訴人らは,平成12年7月政府税調中期答申(甲25)及び平成12年4月小委員会討議用資料(甲26)等によれば,米国のLPSに法人格はないという租税法立法当局等の理解が示されており,他方,平成18年1月に至るまで外国のパートナーシップが法人に該当し得るとの公式の解釈は示されておらず,国税不服審判所長も,同年に本件各LPSや州LPS法を準拠法として組成されたLPSの法人該当性を否定する裁決をしていたのであるから,被控訴人らが,本件各建物の貸付けから生じた損失が被控訴人らに直接帰属すると解し,かつ,これらが不動産所得に当たるとして損益通算をしたことには,真に被控訴人らの責めに帰することのできない客観的事情があり,国税通則法65条4項の「正当な理由」があると主張する(第2の2で引用した原判決の第2の5(5)の(被控訴人らの主張の骨子))。

しかしながら,甲25の記載内容は,法人課税の項目では,近年,外国で設立されるパートナーシップやLLCといった我が国には制度のない外国の事業体が我が国で事業活動を行ったり,逆に,我が国企業がこうした外国の事業体に投資する例も増加しているから,我が国に制度のない事業体に対する課税の在り方を今後検討する必要があるというものであり,国際課税の項目では,我が国の税制では,外国の事業体がその外国において私法上「法人」とされているかどうかにより,法人課税の対象とするかどうかを判断しているが,外国の多様な事業体の中には,その実態を見れば法人税の課税対象とすることがふさわしいものがあるから,法人課税の対象とするかどうかの基準等,検討すべき課題が多岐にわたるというものであって,これらの記載から直ちに,米国のLPSに法人格はないという租税法立法当局等の理解が示されているとは認められない。

また,甲26では,「日米における事業体に係る課税上の取扱い」の表で,GPSやLPSが法人格のないものの代表例として分類されており,米国のパートナーシップは,非法人の事業組織体(unincorporated organization)であると記載されているが,具体的な各州の法律をみなければ,特定の州のLPSが法人に当たるか否かは即断することができない。現に,乙14(コメルツ証券作成の「海外不動産投資事業プロッグラムのご案内」)では,「不動産所得と損益通算制度」(5,6頁)の説明があり,そこには,一定額以上の所得条件を前提として,損益通算制度を利用することにより不動産所得に約2100万円の税務計算上の赤字を計上することができ,年間約1050万円の節税額が生ずる旨の説明があり,米国パートナーシップから外国信託銀行に収益分配され,外国信託銀行から日本人投資家の方々に分配収益が来るという図(17頁)が載っているが,「税務上の取扱はあくまで税務当局の判断で決定されますので,現在の税制に関して前項で記した概略・その他に関しての取り扱いが異なる場合があります」との税務・法務リスクの説明(20頁)もされている。

さらに,国税不服審判所長の裁決が州LPS法上のLPSの法人該当性を否定する見解を示したというのは正確ではないことは,2の(3)クで触れたとおりである。

したがって,被控訴人らが本件各損失を不動産所得に当たるとして損益通算ができると判断したことは,被控訴人ら自身の法令の解釈の誤りにすぎないというべきである。

そうすると,被控訴人らが上記損益通算をしたことに真に被控訴人らの責めに帰することのできない客観的事情があるとの主張は,採用することができず,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるということはできないから,本件各賦課決定処分は,いずれも適法である。

4    以上によれば,被控訴人らの請求はいずれも理由がなく,これをいずれも棄
却すべきであるから,被控訴人らの請求の全部又は一部を認容した原判決の控訴人敗訴部分を取り消し,被控訴人らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官原           優
裁判官江 口とし子
裁判官野 村高弘


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